遠くを見ている
はベッドの縁に座っていた。
きっちりと着込んだ白いパジャマで、目線を少し離れた机の上に置いてある、ペンシーブへ遣っていた。
は唇を閉じたままじっとそれを見つめている。
すると頬に優しいキスの感覚がして、少しセブルスへ視線を遣ったけれど、また目をそれへ向ける。
セブルスはそんな様子のには不服なようで、のパジャマの上からセブルスの手が動き出す。
ペンシーブは元々校長から借りたもので、私がセブルスから閉心術を教えて貰う為のものだ。
今日もセブルス相手にそれを教えて貰っていたが、こうしてペンシーブを使うという事は、私とセブルスの記憶がお互いに渡ってしまう、という危険を常に孕んでいる。
私自身はそれでも良かった、別に私の過去がセブルスに見られたって、特に嫌だという感覚はない。
そして今日私は、セブルスの少年時代、幼い頃の記憶をぼんやりと見てしまった。
はセブルスの手を握る。
の身体に触れていた手が、それで動きを止める。
彼は、私相手に、彼の幼少時代の記憶を見せまいとしているのが分かった。
苛められっ子だったとか、そういうのは私は知っているつもりだけれど、どうも彼は其処にバリアを張っているようで。
はセブルスの手を握って、力任せでセブルスをベッドの上に寝かせ、上に乗り掛かった。
の顔は笑んでいた。
セブルスはがこういう事をしたのは初めてではなかったので、驚きはしなかったが、嬉しそうな顔もしていない。
「抵抗しないの?」
「お前と我輩は力の差が殆どないから、体重を先に掛けた方が勝ちだな」
大人しく諦めたように言うセブルスに、は心と裏腹に微笑んだ。
セブルスの少年時代の記憶、幼かった頃の記憶、それを見て思った。
彼は私を、深く見つめているのだろうか?
彼は私を見透かして、遠くを見ているのではないか?
今こうしている時も、セブルスの深い思惑は、私には窺い知れない。
暗い黒い眼の底が分からない。
本当は彼は何を考えているのだろうか?
――でも、彼が私の事を見ていなくても、それはしょうがない事なのかもしれない。
私も彼の事を満足に見れていないのだから。
見たい、とは思う、けれど、分からない。
そして私自身、決して、心の奥底に意地の悪い大人特有のものが蔓延っていない、とは言えない。
私だって遠くを見ている。
は、片手でボタンを二つ三つ外し、セブルスに覆い被さって、顔を近付ける。
その前にの胸元の銀の細いネックレスが、開いたボタンの間から垂れ落ちて、セブルスの肌に、先に触れた。
2006/12/31
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