「秘密だよ」
あれ以来、幾晩も夜を一緒に過ごすと、数ある単語の中から恋人という単語が目の前に浮かび上がってくる。
ぶっちゃけ、物凄く無理やりだ、とか、訴えてやる、とか、心中に思う事は多々あったし、今もそれは胸の中に存在している。
でもそれは存在しているのに、この単語が、胸に浮かんで来るのだ。
実際今日も程々に、無理やりに、こうして一緒にいる。
やはり彼との関係を言葉で表すと、こうなるのだろうか、とは思う。
事実訴えてやると本気で思っていた気持ちが、今それより小さくなっているのを感じている。
まあ良いかな、と思う気持ちが新たに生まれてきて。
「――秘密、だから」
「…? 何だ?」
が小さく呟いた言葉に、セブルスはを見た。
はシーツに顔を埋めて、頬をピンク色に染めていた。
「私と貴方の関係。
…これだけは、先に言っておかなきゃいけない、って、思って」
普段のらしくなく、そっぽを向いて、小さくぼそぼそと言う。
その様子にまた可愛らしさを感じるが、セブルスは言及する。
「どうして?」
「どうして…、って!
セブ、貴方はこれが人に知られても良いって言うの?」
未だピンク色の頬でセブルスに向き直り、語調を荒げるに対し、セブルスは冷静だった。
彼自身はかなり独占欲が強いので、寧ろ、それを周りにはっきりと示しておきたい方だった。
しかしこういう関係になり始めた今、それをに知られるとその性癖に軽く幻滅されそうで、それを恐れてセブルスは少し言い淀む。
「…何か問題が?」
「ホグワーツには、魔法省関係者の子供多いでしょ。
この学校でそれが知り渡ったら、魔法省の人にもそれが知られるって事でしょ。
私、また魔法省に戻った時、それを知られてたら色々不都合が…」
「我輩との関係で不都合が起きると?」
「そう端的に言わなくても…そうじゃなくて、私、今までそんなのの浮き立った噂もなかったから、絶対からかわれるだろうし。
ごちゃごちゃ言われるのも嫌なの」
そう言い切ったに、セブルスは眉を寄せる。
何故彼はそれを公然の事実にしたいのだろうか、疑問に思いながらも、はまた言葉を紡ぐ。
「それに、そうしたら私の師匠にもそれが伝わる可能性、あるでしょ。
あの師匠、結構そういう所では過保護だから――貴方殺されるわよ」
「…。あながち、有り得ない話ではないか…」
往年の闇祓いであったムーディに殺されるビジョンが、セブルスにも目に浮かんだらしい。
もそれを冗談のように思っている訳ではなく、さっきの言葉は真剣だった。
「――それに、借りにでも先生と名乗っている同士なんだから、そういうのは不味いわよね。
親から抗議が来るわよ。
だから、秘密にしなきゃ。ね?」
「…分かった」
「約束する?」
「約束する」
必要以上にしつこく言ってくるに、そんなに秘密にしておきたいのか、とセブルスは思った。
でもがそう言って嫌がっている以上――それにムーディに殺されたくはないし。
約束をしておくのが妥当だろう。
セブルスとしては不承不承だったが、は少し微笑んでまたスーツに埋まる。。
「ところで、我輩達の関係とは、つまり何だ?」
「え?」
は目線をセブルスに上げ、気の抜けた声を出す。
「…関係って……セブ、貴方分かってるでしょ。
寧ろ貴方が望んでたっていうか…」
「お前の方から、それを秘密にして欲しいと言ったのだろう?
それにお前の方から、それを明確に言っていないが」
何故自分が責められる立場と、なっているんだ。
はその単語が爛々と頭に浮かんではいたが、それを口に出すのは、気恥ずかしい。
声に出そうとすると、喉元でそれは止まってしまう。
しかしセブルス自身もその単語は分かっているだろうに。
「…そうだけど…で、でも…」
「何か反論が?」
はまたその単語を思うと、顔が火照ってしまい、セブルスと目が合わせられない。
彼は私がこうなってしまうのを、分かって言っているんだ。
「――セブ、鬼畜!」
「答えられないのかね?」
だから、それが鬼畜なのだとは心の中で吼える。
真っ黒な目と視線を合わすのが怖く、はしどろもどろに枕を見つめる。
そしてぎゅっとシーツを引っ張り上げて、その中にうずくまりながら何とか言う。
「……こ…恋人、です…」
セブルスはそう言うを楽しげに見る。
「ならばそう、振舞って貰おうではないか」
「いっ…!?」
は頬を赤らめたまま、身を引くも、新たに鬼畜だという事が明確に分かった恋人相手、楽にそうさせて貰える訳はなかった。
2006/10/31
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