失った哀しみが
クィディッチ・ワールドカップ、トライウィザード・トーナメント。
今、英国魔法省が抱えている大きな行事は、この二つだ。
近年で最も大きく重要な行事だといえる。
両方、数年前から話し合いや準備が始まっていたが、やはりギリギリまでこういうものは引き摺るらしい。
この頃魔法省はてんてこ舞いの状況で、両方に深く関わる国際魔法協力部等は凄く大変だろうな、と他人事に思う。
確かに、それは他人事だから。
闇祓い本部の自分の程々に整頓されたデスクに座りながら、眉を寄せてワールドカップのタイムスケジュールを眺める。
一年間使われる事のなかったデスクだたが、それはもう元の様子に戻っていて、愛用の羽ペン、それに各種の本などが程々に整頓され、置かれている。
は溜息を吐いて、その羽根ペンを手に取りインクを漬けて、その羊皮紙に一言二言を書き加えた。
そうするとはかたりと羽ペンを置いて、椅子に深く背を預け、足を放り出し、大きく伸びをした。
筋肉が引き伸ばされるのを感じるのと同時、周りを見渡すけれど、両脇のデスクは誰もいない。
そして凝り掛けてきた肩を手で解してから肩を回す。
しかしそうしてみるも、何だか心が落ち着かない。
前々からそれは感じていたのだが、何だか空虚感…というか、物足りないというのか。
何かの物足りなさを、何でもない時々に感じるのだ。
此処に戻って来てから、感じ始めていたそれ。
「…」
仕事そっちのけでふいとその正体を考えて、比較の対象にホグワーツにいた頃の自分をじっと思い出してみる。
――ああ。
考えたら、すぐに分かる事だった。
はその事に苦笑し、自分も変わったな、と感じる。
年中、一日中、隣に、或いは同じ部屋に、べったりと、恋人と称せられる人間といるだなんて、かなり変わった環境だったと今自覚する。
そうしていて喧嘩しなかった訳でもないが、何であれずーっと側にいたのだ、あの男は。
その環境でも関係が巧くいってたには、いっていたし。
だから今私は寂しいのか。
一人になって寂しがっているような自分自身の心中に、苦笑を止める事が出来ない。
そんなに感傷的な人間だったんだ。
…否、一年間で人間的な感情を養われた、というのが最も正しいのであろう。
何にでも耐えうる、図太い神経してる、って自負してたのにな。
セブのお陰で崩れちゃったよ。
はあ、と息を吐いて、肩を下ろす。
仕方のない人間だ、自分も。
そう思っては少し眉を寄せて、肘をデスクに着く。
――大丈夫、失ってないから。
自分の心中に語り掛ける。
今欲しているものは、失った訳じゃ、ないから、大丈夫。
会いに行こうと思えば、結構無理をすれば、会いに行けるよ。
だから哀しむ必要なんかない。
は着いていた肘を上げて、積み重なった封筒に入った書類から、一番上のものを取って取り出してデスクに広げる。
じっとそれに、表情を変える事無く、いつもの通り目線を通し始めた。
2006/9/16
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