涙だけが静かに














ベッドの上できゅっと身を小さくすると、今日怪我をした左肩が痛んだ。
そしてまた更に身体を丸め込むと、昨日怪我した右足がズキリと痛んだ。

短い髪が頬を伝い、シーツの上に落ち、顔を渡った細い髪の流れによって視界は、霞んで、だけれどもそれを除ける事はしない。

殆ど真っ暗であったが、目が慣れてくると、薄い光の存在を感じ取る事が出来る。

それは何処からもたらされた光かは、知らないけれど。


死んだように白いベッドの上に横たわったまま、は微動だにしなかった。
小柄な少女の身体はますます小さくなって丸まったまま。

私は何をしているんだろう。

がらんどうな頭の中にそれが反復する。

絶対的な正義があると信じ込んでいた少し前の自分。

それは土台に小さな穴があいて、崩れたようだ。

目を瞑ると色々な映像が思い出されるようだから、出来れば目を閉じたくなかった。
瞬きさえ嫌だと思う。
だけれども、今も大腿に感じる、いつの間にか習慣となった杖の存在の感触は、生々しくそれを思い出させる。

正義なんてない。

あるのは、単なる人間の意志と欲。

それを正義なんて、自ら名乗るなんて馬鹿みたい。

確かに、ムーディさんは自分達が正義だ、なんて、言った事は一度もなかった。
私も早く気付けば良かった。


私は単に、人を殺したり、傷付けたりする事が単純に嫌だったから、今のこの場所にいる。

でもそれは幼かった私の浅はかな行動に過ぎなかった。

魔法省も、ヴォルデモートも、やってる事は同じじゃないか。


お互い探り合い、傷付けあって、お互いに自分の世界を構築しようとしているだけだ。
魔法省も役人が少し禁呪を使っても、もう黙認状態であるし、そんなものなら、死喰い人と何も変わるものはないじゃないか。

正義なんてない。

あるのは思想の多数派と少数派。

ある時は単に多数派が正義だと言われたり、ある時は、今までの歴史が繰り返してきたように、少数派の革命家が正義だと言われたりしているだけ。


私が簡単に思っていたのは、人を殺した方が悪いんじゃないか、という事だった。
それは間違っているとは思わないけれど、この情勢に、その理論は通用しないのは明確に分かっていた。

私は何をしているんだろう。


きゅっと心臓が潰されるような感じがして、緩い痛みが其処を走る。
膝を抱え込もうとすると、体中の傷が痛んだけれど、無視した。

音のない世界に、涙だけが静かにベッドを濡らしていた。

…早く寝なくちゃ。
こうしてゆっくりベッドで寝れるなんて、滅多にない事なのだから。

両目の上に手を乗せて仰向けに転がると、視界が真っ暗になる。

明日の朝には平然とした顔で、私にとって余りにも強い彼に、付いて行かなくてはならないのだから。




























2006/9/16






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