相棒














は無言で歩いていたが、ぽつりとこう漏らした。


「前にざっと七人、後ろに五人」


この師匠がこれに気付いていない訳がないが、あまりにも何も言わないから、こっちからこう述べたのだ。
しかし当の師匠は表情を変えない。

…幾らノクターン横丁を歩いているにしても、これは、ない。
今は真昼間だ。


「凄いわねアラスター。ただ歩いているだけで、こんなに集まって来たわよ」

もな」


殺気がびんびんとこちらに向けられているのを、感じる。
はそう言うムーディに不機嫌な顔を見せた。


「前まで、こんなのなかったわよ」

「ヴォルデモートが落ちた今、それで具合が悪くなった奴らが今躍起になっている。
 まあ粗方――」

「私達にでも、ヴォルデモートの居所を聞き出そうとしているのか」


そんなの、こっちが知りたい。
しかしそういう用件で、闇祓いが襲われる事件が増えていると言えば、増えていた。
残党を探す方が、ある意味ヴォルデモートが健在であった時より大変なのだ。

ムーディはの答えに頷きつつも、歩を進めていた。
階段を上って行く。
はその横に従っていた。

辺りに人はおらず、しんとしている。
汚れた壁が目に映る。


「だから本当に来るのか、と聞いてやったのに」

「そんな控え目な聞き方じゃ分からないわよ」

「でもまあ、大丈夫だろう」


ん? 、とは首を傾げた。


「寧ろお前がいた方がやり易い」


は目を見開き、ムーディに先の言葉を促すような動作をしたが、ムーディはそれ切りむっつり黙ってしまった。
でもはその言葉が嬉しくて、小さく微笑む。
トントンと最後の階段を上り切る。


「調子に乗ったらいかんぞ」

「それは心得てます」


小声でそう会話を交し合った途端、二人の歩みが同時にピタリと止まった。
はムーディの背後に一足で回る。


「Stupefy!」

「Stupefy!」


二人同時に光の閃光が迸り、明るい光が暗い路地に満ちた。

は目の前で、一人の魔法使いが倒れたのを確認した。

そして姿現しをし、わらわらと出てきた魔法使い達の背後に回って杖を振る。
一人が倒れる。

はあまりに呆気ない感覚を覚えていた。
彼らが放つ魔法は放っておいてもそれ程苦しいという訳でもなく、マントを翻したらそれは跳ね返って彼らに当たる。
何だこれ。
雑魚じゃないか。

は杖を振って三人分の武装解除をし、その三本の杖が手元に来たかと思うと、また一度杖を振った。
杖の先から三叉に分かれた光線が走り、呆気なく三人とも倒れる。

それが終わるとはまた姿を眩まして…


ドン!


最後の一人の前からはムーディが、後ろからはが呪文を発していた。
その魔法使いは崩れ落ちた。
それからピクリとも動こうとしない。

少し砂埃が舞い上がっていた。
立っているのが二人、後は皆地面に倒れている。

あっという間の出来事だった。


「…死んでない、わよね…?」

「この位で死んだらお笑い種だ」


ムーディはその魔法使いを無視し、杖を振ると、その場にいた全員が括り上げられた。


「儂はこいつらを魔法省に引き渡してくる。頼まれてくれるか?」


元々買おうとしていた物品のリストが、の手に渡る。
は頷いた。


「寄り道するんじゃないぞ」

「そんな小さな子供みたいな…」


寄り道する場所、がノクターン横丁なのがスケールが違うが、はかくんと肩を落した。
ムーディはくるくると歩き回り、彼らを一箇所に集めている。


「このような輩に注意するのも当然だが、この辺りは変質者も多いらしいから気を付けろ」

「…え、私、この辺り何回も一人で歩いた事あるけど」


妙に女扱いしてくれる言葉に眉を寄せながら、矛盾する事実に困惑して、考える。


「…そうだ、変質者もヴォルデモート卿を恐れて、出て来なかったんだ」

「都合主義だな」


はきっとムーディを睨み付けた。
彼は彼でふと笑って、を見下した。


「気を付けて行って来い」


それだけ言うと、その場にはだけが残った。
は黙りこくって少しの間、立ち尽くしていた。
しかしマントを翻し、ずんずんとノクターン横丁に入り込んでいく。

良いよ、良いよ、襲われてやる。
それで見返してやる、とか、合理的とは言えない思いを抱きながら、はじっと前を見据えて歩いていった。



























2007/8/3






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