出会い














「すみません」


後ろから声をかけられて、は振り返った。
すぐに目に入ったのは、ショッキングピンク。

は日常生活ではなかなかお目にかからない色に目を瞬かせ、その人の顔へ目線をやる。
十代後半あたりだろうか、若い女性だった。
黒い目が好奇心で光っている。

ショッキングピンクは、髪の色だった。


「えーと、闇祓い本部はどこでしょうか?」


尋ねられた先は自分の勤めている所だった。


「本部に何かご用でも?」

「あ、はい! あの……」


彼女は言葉を止めた。
何だ?
は自分の顔が、やたらに観察されているのに気付いた。
彼女は真顔で眉間に皺を寄せている。


「……あなた、もしかしてさん……?」

「そうですけど……」

「うそ!? ほんとに!? まさか、初めて魔法省に来た時に会えるなんて!」


はきょとんとして、目の前で大いにはしゃぐ女性を観察した。
一人で大声を上げ、わたわたしている。

は観察しつつも、腕を組んで首を傾げた。


「初めまして! 私、あなたに憧れて闇祓いになろうって決意したんです!」

「あ、はあ……」


無理やり腕を引き出されて握手される。
ブンブン腕を振り回される。


「まさか、試験当日にあなたに会えるなんて! これって絶対受かるよねっ」


いや、それはないだろう、とが突っ込む前に、女性は一人ガッツポーズをして意気込む。
は気になっていたことを尋ねた。


「貴方、七変化ね?」

「凄い、流石です。そうなんですよ!」


そう言って髪の色を変化させる。
色は濃いグリーンに変わった。
その色のチョイスもどうかと思う。


「よーし、テンション上がった。頑張るぞーっ。
 じゃあ私これから試験受けるんで、宜しくお願いします!」


そう頭を下げて言って、女性はずんずんと足を進めて行く。
はぽつんと取り残された。


「……場所、知らないんじゃあ……」


それに彼女は誰なんだ?

しかし、七変化か――
は腕を組んで考えた。















あれから彼女との関わりはなかった。
試験に関しては全く関与していなかったし、彼女を確かめようとする気もなかった。

そうしたままこの出来事を忘れそうになっていたある日。

仕事中、何だか騒がしいと思って本部内の様子を伺う。
見慣れない若い魔法使い達がいる。
ああ、研修生か――と納得して仕事に戻ろうとした時、鋭い声が上がった。


「あ、さん!」


うん?
愛称で呼ばれたが、こんな声に聞き覚えはない。
が辺りを見回すと……。


「久し振りですー」


デジャヴ。
ショッキングピンクの再来だ。
妙に親しげに口を開く彼女は、ブンブンとこっちに手を振っていた。

は小さくそれに応えて、仕事に戻る。


「……来たかぁ」


何となく予想はしていたけれど。
七変化というアドバンテージは大きい。

は羽ペンをクルクル回した。
そうすると、研修も無事に乗り越えられる可能性も大きいだろう。

まあ、素質云々もあるけれど、妙に向こうも私に対して好意的らしいし。
私にも研修生を指導する順番が回ってくるだろうが、その時にどうやって痛めつけようかな、と妙にサドスティックな思考を巡らしただった。
そしてそうしている自分にはたと気付いて、そんな所まで師匠の影響を受けたらしい、と一人思う。

師匠のあれをサドと呼ばないで何と呼ぶんだ。
……あ、スパルタ、と呼ぶのか。



























2008/6/22






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