夢の逢い
「、本部長さんが報告書はまだかって」
「早く仕上げて欲しかったら、アラスターを呼んで来てよ!」
は怒鳴るように言った。
若い男の闇祓いはそれに苦笑し、が取り掛かっている報告書を上から見下ろす。
「時間かかりそうだなあ……」
「じゃあ貴方が手伝ってくれる?」
「御免だよ、とムーディの二人合わせての報告書の束なんて」
はきっと睨み付けた。
彼はそれを受け止め、かつ笑う。
「休みは取れそう?」
「この状況から冷静に判断して」
「どこか遊びに行きたいんだけど」
「じゃあ仕事を手伝って」
「冷たいなあ、は」
はこの状況に、ドキリと気付いた。
忙しく動かしていた羽ペンを持った手を止め、羽ペンをペン立てに置く。
そして顔を彼に向かって上げた。
そして手を伸ばし、彼の手を握る。
「ウィル……?」
彼は何も答えない。
次の言葉を言う前に、頭は妙な冷静さを発揮して状況を判断する。
これは――
夢だ。
は無理やり夢を断ち切った。
悪い夢を見ている時、夢の中の自分がそれを冷静に判断し、夢から覚めるという事は経験した事がある。
目を開くと、目の前には単調な部屋が写っていた。
手をギュッと握っても自分の体温しか感じることが出来ない。
ゆっくりと少しずつ息を吐く。
夢の残像が頭を掠る。
何故、今頃。
こんな夢で彼と逢うなんて、長年なかったのに。
「……ウィル……」
「それは誰だ?」
背中から聞こえた低い声に、は首をそっちへ向ける。
いかにも不機嫌そうなセブルスが其処にいた。
「……起きてたの?」
「で、その男は誰だ?」
ベタな展開には内心驚く。
まさか、自分の身にそんな事が起こるなんて考えてもいなかった。
ベッドの中で違う男の名前を言って、問い詰められるなんて。
の唇が微笑みの形を作る。
「随分昔の恋人よ。もう死んじゃったけどね」
「――辛くないのなら、話して貰えるか?」
「ええ。勿論」
はそう言って身を起こし、枕に背凭れする。
セブルスも倣ってそうした。
は至極当たり前の口調で、話し始める。
「ヴォルデモートが一旦いなくなった辺りの時、彼も闇祓いやってて、その関連でなるようになっちゃって。
それでお互いの気持ちを確かめて、身体関係を持った次の日、死喰い人に殺されちゃって」
が腕を組んでうんうん、と頷く。
「酷い男よね。私、彼が初めて身体関係を持った人だったのに」
「……割り切って話せるようになる程、時が流れたか」
「まあね。二度と恋愛なんかするかと思った」
「――お前の内心が読めてきたぞ――」
はセブルスの言葉に疑問符を飛ばす。
セブルスは、今までが妙に恋愛関連の話に首を突っ込もうとせず、自らも遠のこうとしていた理由に合点がいく。
彼女のトラウマはここだったのだ、と。
我が身の防衛の為だったのだ。
セブルスの気持ちがすっきりした所で、は何気なく語りかけた。
「貴方は私より先に死なないわよね?」
「平均寿命は女性の方が一般に長いぞ」
「そういう意味じゃなくて」
真剣な瞳がセブルスに向けられる。
セブルスはが幾ら待っても、それに頷く事も首を振る事も、言葉を発する事もしようとしない。
沈黙の時間が流れる。
はぷっと吹き出した。
「……笑うな」
「だって、何とも答えようとしない貴方が、面白くって……!」
「どこが面白い!?」
「全部」
セブルスは困り果てて、肩を揺らして笑うの背を摩る。
さっきまであんなに真剣な眼差しをしていたのに。
彼女にとってそれは、大きな位置を占めない筈がない話なのに。
そしてそれにイエスともノーとも答えられない、我が身の不甲斐無さを呪う。
彼女はそれを、分かっているから笑うのだろう。
は背を摩っているセブルスの手を手で止めて、それを握り締めた。
「うん、そうね。地球上の誰も、その質問に正しい答えを出す事は出来ないわね」
2007/12/29
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