傷付くのを恐れて線を引いた














スピナーズ・エンドで目覚めるのはこれで何度目だろう。
朝方目覚めたは寝癖のついた髪を撫でながら、身を起こす。
本棚の隙間にある僅かな窓から光が入って、ベッドの上に弱弱しい日光が降り注がれている。
微かな埃が光に当てられ、空を舞っていた。

何も身体に身につけないまま、また暖かさを求めて身体はベッドに舞った。
真っ白なシーツの上に寝転んで、ぼんやりと空を見つめる。
そして、横を覗く。

今日も、彼は、いる。
寝ている間に彼が出て行ったことなど今まで一度もなかったが、毎朝これを確認する度にほっと胸を撫で下ろす。
まだ手が届く所に、彼はいる。

相変わらず、何とも私たちは特殊な関係を保っているものだと感心する。
まあ、閉心術をお互い行いながらベッドの上にいるカップルなんて、私たち以外に存在するとは思えない。
は、もうそれを一種のゲームのように捉えていた。

もう一度目を瞑る。
この時間をできるだけ噛み締めたいとでもいうように、はベッドの潜り込んで、永遠の夢を見ようとした。


まだ意識が残っている内に、隣のセブルスが身体を起こしたのを感じた。
そのままベッドから出て行くのかと思いきや、彼はベッドの上から動かなかった。
閉じた瞼からは、彼の様子を視覚的に捉えることができない。
大分時間が経ってから薄っすらと目を開くと、セブルスは青白い顔でまるで祈るかのように手を組み、目を伏せていた。

ドキリと胸が跳ねた。
しかし、それを彼に悟られることがないように繕い、はセブルスの手を取った。
セブルスは驚いたかのように目を開いて、こちらを見た。
焦点が合うまで暫しの時間がかかった。

ああ、彼は、違うものを見ていたんだと瞬間に悟って、握った手を抱きこむように彼の身体に手を回した。
彼は従順にそれに従った。
特に意図をしていなかったが、何もまとわない胸同士が触れ合った。


「セブ」


相手の鼓動を心臓で感じ、寒さに背中に鳥肌が立った。
彼の名前を呼ぶ。
私が知っている他の誰も呼ばない彼の呼称を、きっと他の誰も招かないだろうここで、呼ぶ。

セブルスはまるでそれが聞こえていないかのような様子だった。
私が彼を抱き締めるだけで、彼は何も動きはしない。
熱いものが渦巻く胸をどうしようかと持て余し、は目を瞑った。
益々背中に鳥肌が立ち、肩まで寒さに震え出した。


冷静でいる外側の私が叫ぶ。
でも、これ以上近付くことなどできないのだ、と。

分かっている。
愛されたいと願う内側の私が、外側の私を睨みつけながら叫んだ。
そんなこと、とうに分かっていると。

傷付きたくないと願う心の最奥にいる私は、そんな二人に対して怒鳴りつけた。
――これ以上私は傷付きたくないのだ! だからこれ以上勝手なことはするな!



























2009/11/22






close