14/空白の魔法














は再び、魔法省を離れた。
荷物はホグワーツに滞在していた時のものとほとんど変わらず、ペットまでを引き連れ、日本へ旅立った。
日本魔法省近辺の寮を借り、特に不自由もなく、は与えられた仕事をこなした。

何よりもまずここで驚いたことは、魔法使い以外の生物――魔法動物が、日本魔法省の中で幅をきかせ、官職に多く就いていたことだ。
最初に日本魔法省へ足を踏み入れた時、そこを悠々と歩いている河童や座敷童子などに仰天した。
さらに、ここでは幽霊なども魔法省で働いているらしい。

文化の違いというのか。
説明によると、そういった「妖怪」は、ここでは人間よりも大きな顔をしているらしい。
様々な歴史的背景があるらしいが、その詳細を聞く機会はなかった。


は英国魔法省と連絡を取り合ってはいたが、それ以外に英国とコンタクトを取ろうとしなかった。
コンタクトを取る方法が数少なかった、という理由もそれに含まれる。
ふくろうが大陸を越えて飛ぶことはないし、もっとも日本にふくろう郵便という文化はなかった。
煙突飛行にしても、煙突そのものが日本にはほとんどない。

連絡を取ろうとすれば金銭が高くついたのだ。
一方、の方も、確かに英国のことを振り払おうとしていた。

何よりも、師匠との確執が胸に重く圧しかかっていたのだ。


の願っていたことは、何故か簡単に成し遂げられていた。
新しい環境に順応し、英国のことはもう頭に上ってくることはない。
不快で、胸を悩ませることは、心の外へ追いやって。

日本へ来る前にセブルスに言っていたことのように、忘れてはならないことは多くあった。
しかし、その忘れてはならないことまで、「忘れて」、しまっていたのだ。

の自棄な感情がそうさせたのか?
その答えは分からない。
しかし、は、己の心にとって不快なことを振り払えたという満足だけを抱き、英国を振り返ることはしなかった。

また、不思議なことに、そのことを「不思議がる」ことさえしなかった。
英国を捨てたように振舞っている己に、不信感を全く抱かなかったのだ。
そのまま季節は流れて行く。

お終いには、こちらの仕事が急がしく、第三の課題に参加しないという返答を英国へ送った。

理想と現実が重なった姿を、は真実だと思っていた。
この身に添ったものであると、思っていた。


――不思議なことに。

の左腕の闇の印は、が日本に来た時から、痛むことも濃くなることもなかった。



























2009/2/19






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