聞こえるのは、マグルの悲鳴と、その場に似つかわしくない笑い声だ。

固められたアスファルトにひびが入り、その上に魔法使いのヒラヒラとしたマントが舞う。
とても奇妙な光景だった。

道の真ん中は深くクレーター状にえぐれ、下水管が亀裂して水が溢れている。
その道の見る所見る所に、死体が倒れていた。














04/Sirius Black














は、目の前でシリウス・ブラックらしき青年が特殊部隊によって追いつめられているのを見た。
そして、自分の傍にいるムーディが、その姿を激しい憎しみの視線で見ている。
しかしはその理由にまで意識が回らない。

ブラックは気が狂ったように笑っていた。
この死体が累々している場所で笑っている男など、気が狂っているとしか考えられない。

は疼く身体を抑え、霞みそうになる目を奮い立たせる。
またはネックレスを外した。

そしてその瞬間、は眉を寄せた。


「……違う」


は傍にいる青年の気配を確かめ、また目を瞑る。
間違いない、違う。

は辺りを見回した。
何かを探しているようだ。
ムーディはの行動を不穏に思う。

朦朧としそうになる頭、崩れ落ちそうな身体が、邪魔だ。
は大きく息を吐いて、深呼吸する。


「記憶の操作の魔法が……」

「記憶の操作?」


ムーディは不思議に思う。
彼は、の能力を、今までの経験から信じていた。

の首筋には赤い筋が垂れ落ちている。

は其処を押さえ、強くブラックへ振り向いた。
そしてムーディの手を抜け、一人歩いて行く。
目は何かを捉えているようだ。


「ブラック! 貴方は――」


はムーディを引き寄せず、一人でブラックの方へ歩く。
それを見た特殊部隊の何人かが、訝しげにを見た。

の顔は、急に何かを気付いたかのように、驚きと確信で彩られていた。


「貴方じゃない――これは――」


は、特殊部隊の魔法使い達の前に来て、それをかき分けようとする。
かき分けられようとしている特殊部隊の魔法使いは、それがだと認知するが、彼らは杖をへ向ける。
彼らは殺気立っているのだ。

其処へムーディが乱入する。
ムーディはを止めようとする。


「放して、放して……」


ムーディは、正気でないをその場から引きずり出す。
どっちにしろ、こうしないと、殺気立った特殊部隊の隊員によっては失神させられる。
元々ダメージの大きかったは、容易くムーディに抱き込まれる。

ムーディは、の不規則な呼吸を感じた。
そして彼女を掴んだ手が、血によって染まるのを感じた。

ムーディは抵抗をしなくなったに気付き、を覗き込むと、彼女は目を瞑っていた。
手足に力は入っていない。
体重は全てムーディへかかっていた。

力の抜けたその肢体をぐいと抱えた。



























2008/8/20






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