結局、あの後彼らはどうなったのだろうか。

はあのまま部屋に戻って一日部屋に閉じ篭り、セブルスと顔を見合わせずにいた。
そしてそのまま次の日になる。

行動を起こしたのは、驚くことに、からだった。
彼女にはやらなくてはならないことがあった。














28/連結継続点














はセブルスとリーマスが一緒にいる時を見計らって、彼らに話しかけた。


「ねえ、私、貴方達に聞きたいことがあるんだけど」


二人は、扉を閉め部屋へ入ってくるに振り返った。
此処はリーマスの部屋で、脱狼薬の件で彼らは此処にいた。


「単刀直入で悪いわね」

「いや、大丈夫だよ。聞きたいことって何だい?」


が首を少し傾げて言った言葉に、リーマスは微笑んで答えた。
の方も微笑みは絶やしていない。
セブルスはそんなをいつも通りの目で、じっと見ていた。

もその視線を感じているのだろうか。
首にはしっかりと彼からもらった銀色のチェーンをつけていた。


「貴方達の学生時代の話を聞かせて欲しいの。シリウス・ブラックと貴方達は同級生だったんですってね」


は無邪気そうな笑顔だ。


「それで全くの赤の他人じゃなくって、交流があったと聞いたわ。それなら参考に話を聞かせてもらえたら嬉しいかな、って思って」


はセブルスとリーマスを観察した。
セブルスは露骨に嫌な顔をしていたが、リーマスは唇にいつもと変わらない微笑を浮かべ、真意が分からない。


「勿論貴方達だけじゃなくって、先生方からも話は聞いたわ。それで貴方達に辿り着いたってわけ」

「なるほどね……」


リーマスは腕を組んだ。
そしてちらりとセブルスを窺い見る。
やはり彼は、眉根に皺を刻んでいる。


「――良いかしら?」


あくまで何も知っていなさそうに言うが、彼女は先生方から詳しいことを聞いているのだろう。
苦い部分を此処で明らかにさせまいとしている。
彼らの記憶の、とても苦い部分を……。

はセブルスがこっちを見ていないのを確認してから、リーマスへ緩めた視線を送った。
懇願する目だ。
彼女は大方の裏事情は知っているのだ。


「分かったよ」

「有難う、リーマス!」


リーマスはに抗うことができないのは分かっていた。
立場が違う、そしてその強さも違う。
しかし、はただ嬉しそうにしていた。

そして目線はセブルスの方へ。


「セブルスはどう?」


リーマスにはセブルスの心の葛藤が窺い知れた。
それに少し愉快な気持ちになる。
彼の過去は、そんなに人に――特に懸想をしている相手に、誇れるものではないからだ。

セブルスはなかなか答えを出さない。
は仕方ないな、とでも言いたげに息を吐いて、腕を組んだ。


「じゃあ今晩そっちに行くわ。その時に気が向いたら、話してくれる?」

「……分かった」

「良かった! じゃあ今晩ね」


セブルスはに信じられない、とでもいうような視線を送っていた。
しかしはそれを受け止めて、かつ微笑んでいた。
その言葉の裏の意味がセブルスを驚かせている。

の瞳がその裏の意味を語っていた。

リーマスはセブルスが部屋を出て行くのを見計らってから、に言った。


「誘ってるの?」

「……まあ、そうかも」


は奇妙に力の抜けた身体で、リーマスの目の前の椅子に座った。
顔からも力が抜けて、笑みは消えている。


「こういうのは、仕事で、慣れてるし」

「仕事大変そうだねぇ……」

「大丈夫よ、そういうのに対処する方法は知ってる……けど、それが今回当てはまるかどうか」


は苦笑した。
当てはまらない、と思っている。


「そう思ってるのに、そうしたんだ」

「一度事があったら、もう二度も三度も一緒でしょ」

「……だから女は怖いんだ」


は満足げに笑った。
その笑顔はすっきりとしたもので、昨日までの彼女が見せていたものではない。
何処かが吹っ切れたようだ。


「セブルスのこと好きなんだ。ファーストネームで呼び合ってるし、妬けるなあ」

「そこまではいかないけど……誰にしろ、沢山の好意を向けられて、それを嫌がる人間がいる?」

「その愛され方が異常じゃなかったら、嫌がりはしないだろうね」

「そうでしょ」


の表情は、多少さっきの言葉を言うのに戸惑ったように、はにかんでいる。


「で、今晩どういう結果になって欲しいの?」

「此処で私にそれを言わす気? リーマス?」


の鋭い視線に、リーマスは降参して口を噤む。
はまたそれを見て唇に笑みを浮かべた。
彼女は、そういう所は全く変わってはいない。

彼女の笑みはすっきりとしたもので、淀みを含んではいなかった。
多少の苦いものは含んでいるけれど、それも僅かだ。


「……それに、ちょっとすっきりした部分があるの」

「何?」

「女だって自覚し直して、何かすっきりした。
 今まで強がってた部分もあったんだけど、それを全て肯定されたみたいで。
 フェミニストじゃないけど、今まで私は男以上に何でも出来るし、何でも出来なくちゃいけないって、思ってたの。
 でもねえ、どうしても出来ないこともあるし、そんなに強がらなくったって良いんじゃないかって思ったのよ」

「「男以上に」何でもしようと思ってたわけだ」

「まあ出来ることもあるんだけど、どうしても出来ないこともあるわけで……」


は羊皮紙と羽ペンを取り出した。


「……で、惚気話はこれでお終い。もう十分でしょ? 私の仕事を遂行させて下さるかしら?」


リーマスはそう言うの目に、冷たいものと知性の光を感じた。
尋問、いや、単なる取調べ……いや、これは事情聴取のはずなのに。
しかしよく考えてみたら、彼女は今まで闇の魔法使い相手にこういうことを行うのが多かったのだろうわけで。

唇の笑みを素直に信じても良いのか、疑いたい気持ちを持ってしまうのだ――















「それじゃあ、貴方に最後に一つ聞きたいことがあるの」

「何だい?」

「ブラックが黒犬のアニメーガスだってこと、知ってる?」


はさっきまでと変わらない口調、また変わらない目をしている。
しかし何気ない口調で語られたその言葉は、彼女が今まで校長以外に知らせず、ひた隠しにしていたものだった。

リーマスはの言葉に何気なく答えた。


「……いや、知らなかったよ」

「そう。じゃあ、このことは他の人には伏せておいてもらえる? あまり世間に公表する情報じゃないの」

、このことは校長もご存知なのかい?」

「ええ」


リーマスは僅かに眉根を顰めた。
しかしはそれを見ない振りをしていた。


「では、これで終わりにします。申し訳ないわね、リーマス。あまり気持ち良くなかったでしょ?」

「君の役に立てるのなら」


リーマスは、先ほどの表情を僅かにも感じさせない笑みを顔に浮かばせていた。
は座っていた椅子から立ち上がりかけるが、ふともう一回リーマスに顔を向ける。

は彼の真意が知りたかった。
ずっと前から、そうだった……彼が何を考えているのか分からない。
こっちから聞かないと、彼はそれを示すことはしないだろう。


「……ねぇ、今、貴方の親友が親友の息子のハリーを狙っているんでしょ?」

「……そうだね」

「貴方はどう思っているの?」


ストレートに聞いた。
その過去に、様々ないざこざ――ブラックがポッター夫妻を裏切った――などがあることは知っている。
しかし、あえて簡単な言葉を言ったのだ。
その言葉の意味はとても重い。

少し沈黙の時間が過ぎる。
リーマスは表情を変えない。
そして、あっさりと場違いかと思えるほどに、リーマスは言った。


「君にシリウス・ブラックを捕まえて欲しい。ハリーを守って欲しい。ただそれだけだ」

「有り難う、リーマス」


は柔和な笑みを見せた。
リーマスも同じものをに返す。


「セブルスによろしく」


は苦い笑みをする。
そしてそのまま扉を開き、部屋の外へ出る。


廊下には、夕方と夜の間の太陽が放つ光が注がれていた。
は廊下を歩き始める。
頭の中で今までのことを纏めながら。


じゃあブラックは親友にも知られずに、アニメーガスになったとでもいうのか?
否、それは違う。
幾らブラックが優秀な魔法使いだったとはいえ、アニメーガスは学生が一人でなれるほど、簡単なものではない。

リーマスは人狼だ。
ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックはリーマスの親友で、とても優秀な魔法使いだったという。
ならば月に一回姿を眩ませたのだろう、リーマスの正体に気付かないはずがない。

そして彼らはそれを知り、何をしたのか……容易に想像出来る。
彼らは人狼になったリーマスと同等の力を得るため、アニメーガスになったのだ。

リーマスはブラックがアニメーガスだということを、知っていたはずだ。
そして私にブラックを捕まえて欲しいと思っているのならば、リーマスは学年の初めに私にそれを教えてくれるはずだった。
しかし現実はそうではない。

それを妨げたものは何なのか、私には想像することは出来ない。

は息を吐いた。

十二年前、またそれ以上前に、彼らの間には一体何があったのだろう?
様々な人から情報を聞くことしか、私に推理する手段はない。

どうしても私は、彼ら――ブラック、ポッター、ルーピン、ペティグリュー――の交友関係に、この絡まった事件を解く鍵があると思うのだ。
人の感情が全ての行動の起因となるのだから。

そして……もしシリウス・ブラックの逮捕が間違っていたとしたら、本当に逮捕されるべき人物は一体誰なのだろう?





は目の前に現れた見慣れた扉の前に立ち、身体を固めた。
彼、セブルス・スネイプの部屋だ。

ドアのノブに伸ばした手が止まる。

どうした?
さっき自分から言ったのだろう?
何を戸惑っている?

の心中は渦巻いていた。
この中に入ることをさっき、約束したはずなのに。

でも結局自分は女だったし、女々しいのも仕方がないのじゃないか?

しかし――は目をじっと目の前の扉に見据えた。

こういう女々しさは嫌いだ。
女だからといって、さっき己で言ったこと、成すべきことを果たさないのには、虫唾が走る。
迷って、何処かで助けを縋っている、こんな自分は嫌いなのだ。

はノブに力を込めた。

此処を開くのは、確かに仕事のためのこともある。
しかし私は、私自身のことにけりをつけたい。

与えられているものには、何らかの形で応えたいのだ。

未だ答えは明確には出ていないけれど、それを多分、彼は――分かってくれるって信じてる。
まあ、分かってくれなかったらその場で張り倒してやるけれど。

そしてそれの答えを知るためには、此処に行くしか私が取るべき方法がないのは、分かっている。










*











(やはりお前も女か)

「数ヶ月振りにいきなり現れて、分かったような口をきかないでくれる?」


ふわふわの白い毛の塊がの部屋にいた。
それは、新学期始まって以来目にしていなかったものだ。

はすっと、自分の中のさっきまでどうしようもなく滾っていた気持ちが、落ち着くのを感じた。
シャワーを浴びてさっぱりした身体で、眼下のニーズルを見下ろす。


(趣味悪くないか? 前まであんなに嫌ってた男なのに)

「覗き見してたの?」

(師匠が嘆くぞ。まさか、よりによってセブルス・スネイプか、ってな)

「だから、覗き見してたのかって聞いてるの」

(女は捨てたって言っていたのに。案外お前もそれで嬉しいんじゃ――)


が足元のニーズルを蹴ろうとしたら、それは空を舞ってソファーの上に上った。


(――ないのか? 生殖本能が満たされて)

「これでも人間ですから」


はニーズルを掴み上げた。
しかしニーズルはそれには抵抗しようとしない。

真っ黒な丸い目と、真っ黒なの目が真っ直ぐに向き合う。


「そういうこともあるかもしれないわね」

(そうだろう)


しかしそう言うの目には、全く違う光が浮かんでいる。
の目がきゅっと細まった。


「何処に行っていたの? 五ヶ月近く姿を現さないとは、新記録ね」

(心配してくれるのか?)

「心配、というか不信感を持っているのよ」

(不信感? 今お前が抱いている小さな動物が、そんなに大層なことをしていると?)

「そうね」


のじっとりした目を、ニーズルは何気ない顔で受け流している。


(どうせお前の所にいたって、扱き使われるのが関の山だろう?)

「それはそうとしても、一ヶ月に一回位は戻って来なさい。貴方は私の管理下にいるんだから、その辺はきちんとして」

(戻って来て、お前とあいつの間に入るのも気が引けたのでな)


はあ……。
は溜息を吐いて、ニーズルを掴んでいた手を外した。
ニーズルは軽い動きでの肩へ上り、其処に落ち着く。

このニーズル、主人の言うことをきいたことがありゃしない。
それで自分で餌もとれるし、生きていけるのだから良いのだが……。
多分このニーズルは、ホグワーツ中を回って、探検していたのだろう。
それができるだけの力量が、このニーズルにはある。


「で? ブラックらしきものはいた?」

(そうやって扱き使われるのが嫌だった)

「私がいつ貴方を扱き使ったって言うの? そうしようたって、貴方が言うことを聞きはしないわ」


の耳元で、ニーズルがキュゥと鼻にかかるように鳴いた。
今更小動物ぶったって無駄だ。


(……割に頭の良さそうな、赤毛の半ニーズルは見たが……)

「半ニーズル?」


は眉を寄せる。
するとニーズルは、急にの首の辺りを舐め上げる。


「わっ! ……何してんのよ?」

(キスマークがついている)

「分かってるから! ちゃんと服で隠すわよ!」


そう言って、はマントとローブをたくし上げる。
しかしそれにも負けず、ニーズルはの肩にまだ乗っている。

ははあと再度息を吐いて、ニーズルを肩から下ろした。
その身体はやはり動物らしく、温かい。


「今まで私の様子を見て面白がっていた、ってわけね。私をからかいに来たの?」

(ああ)

「楽しいかしら?」

(そうだな。男に煩わされているお前を見るのは、何よりも楽しい)


は無言でニーズルを地面に下ろす。
ニーズルの黒い目が光に照らされて光っているが、その光はどうも不穏だ。


「面白がってるのも勝手だけど、せめてたまには私に生存確認させなさいよ?」

(私が野垂れ死にをすると思うか?)

「……もー、良いわ。貴方に何を言ってもしょうがないわね。もう、好きな所行ってなさいよ!」

(ああ、お前達の邪魔もしたくないしな)


トコトコとニーズルは歩いて、ドアの隙間から外へ出て行った。
尻尾の先がドアの外へ消える。
薄情な白い動物は、呆気なく姿をかき消した。

はどっと疲れたような気分になるが、これから朝食に行かなくてはいけない。
屋敷しもべ妖精に頼んでも良いのだけれど、ずっと部屋に閉じ篭っているのも気分が良くない。

は部屋を出て廊下に出る。
そのまま大広間へ続く廊下を歩き進んでいると、其処に一つの人影が見えた。


「おはよう、リーマス」

「おはよう、。セブルスは?」

「もうちょっとで来ると思うけれど……」


リーマスはの横顔を見ていた。
はそれに気付いて、目線を上げる。


「じゃ、昨日はうまくいったんだね」

「……まあね」


の頬が微かに赤らむ。
清清しい朝からこんなことを言われて、何となく免疫がなくって嫌だ。


「良かった。これでセブルスの操縦を出来る人ができたよ」

「操縦……」


は呟く。


「あんまりこの学校で惚気ないでよ」

「そんなことしないわよ。それにセブだってそんなに……」

「ああ、一夜にして呼称が変わったんだ。セブって」

「そんな……!」


は自分の失言に気付いた。
しかしそれに気付いた時には、既にリーマスはにやにやとした微笑を唇に浮かべていて。
は眉を寄せ、息を吐いた。


「……何かもう、私、このまま流されそうなのよ――」


勿論それは己の自意識が伴っている。
ただ単に自分の意思がなく、雰囲気に乗せられているだけじゃない。





その言葉の通りに時は流れて、年を越し、クリスマス休暇が終わった。

クリスマス休暇中はろくに仕事も出来なかったが、学期が始まったらようやく生活は落ち着きを見せた。
もう恋愛事に気を揉まなくても良くなったからだ。
クリスマス休暇中に、彼――セブルスとの関係が定まっていた。

ふと冷静になって考えてみると、あの期間の自分はどうかしていたと思うし、この状況はあまりにも自分に不釣合いなものだと思う。
しかし過去は過去、現実は現実であることには間違いない。

それに今、この状況に不満があるわけでもない。

だからそれは今更、考え直すべきことではないのだ。


学期が始まってからは、はファイアボルトの点検と、情報収集に力を入れていた。
ファイアボルトに関してはやはり何の呪詛も見つからない。
情報収集については、はひたすら魔法省の資料室に閉じ篭ってばかりいた。

やはりこの事件を解決する手段はそれしかないと、思っているからだ。
は過去の資料をずっと漁っていた。

そして勿論、は前からある仕事、吸魂鬼の統制などもしなければならない。

更に、はお隣の教授の補佐もこなしていたし、ハグリッドのヒッポグリフの弁護の資料集めまでをこなしていた。
どうやらセブルスは二月に学会があるらしい。
また、ハリーとロンとハーマイオニーとの約束を破るわけにもいかなかったのだ。















「今朝の預言者新聞見たかい?」

「ええ、ブラック相手に吸魂鬼がキスしても良いってやつね」

「君はどう思う?」


二月のある日、リーマスの部屋で時折開かれるお茶会にて。
はリーマスの声の雰囲気がいつもと違うことに気付いて、目を上げた。
そして唇を開く。


「許されざる呪文の執行権限が与えられるのと比べれば、全然よね」

「……」


は低いトーンで冷静に言った言葉に気付いて、はっとすると、リーマスは笑い始めていた。
彼はブラックとは学生時代に友人だったのだ。


「そうだね、確かにそれもそうだ」

「いえ、でも、今更省が捕まえることが出来なかった相手へのキスの執行権を与えたって、何になるというの?」


昨晩、吸魂鬼達にこの事実を伝えた時、彼らがとても喜んでいたのは事実だが。


「なるほど。そういう考え方もあるか……」

「私もそれを決める会議にはいたけど、大して意見は言わなかったわ。
 結局、何かをやったという事実を世間に広めさせたいだけなのよ。
 キスの執行権とか、無駄に与えても危険が広がるだけ、だなんて言ってもあの場では聞き遂げられなかっただろうし」

「君はもしブラックを捕まえたら、どうする気なんだ?」

「キスはさせないわよ、勿論」


はカップを持って紅茶を口に含んでいたが、見つめられている視線に気付いてカップを置く。
そして紅茶を口から喉に流し込んだ。

リーマスの目が感情を含んでいる。
今まで、彼の目にはあまり感情を見ることは出来なかったのに……だって彼は、いつだって穏やかな目をしていた。


「キスなんかさせなくったって、私でブラックは抑制できる」


の目には、リーマスが穏やかに微笑んだように見えた。
しかしその表情も一瞬のもので、捕らえ難いものだった。


「まあ吸魂鬼達がブラックを捕らえたら、そんなことは言えないけどね。その時は彼らに判断を任せるわ」

「そうか……」


リーマスは考え込むような格好だった。
目はの姿を捉え、頭の奥では思考を巡らせている。


「じゃあ、もし君に許されざる呪文の執行権が与えられたら? どうする?」

「――使う必要がなかったら、使わない。使えない、とは絶対に言わないわ。
 そういうものを使わないで仕事をするのが本当のプロだって、マッド=アイの言葉。誰だってあんな呪文を使いたくないでしょ?」

「……良かったよ、君がそういう人で」

「どうも」


は微笑んで冷めてしまった紅茶を啜る。
目の前のリーマスがほっとしたような顔つきをしているのを見て、は胸を撫で下ろす。

また、学生時代の友情は、全てが消えてしまったのではないらしいとは思った。


「で、ハリーの守護霊の呪文のレッスンはどう?」

「ああ、順調だよ。彼の年齢にしては、あの進歩は素晴らしい」


今日の夜、ハリーにファイアボルトを返す。
マクゴナガル先生はそれに大喜びだ――グリフィンドールのクィディッチの試合はもうすぐだ。
クィディッチ競技場でハリーの飛んでいる姿、私も見たいと思う。



























2008/3/21






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