意識に何かが引っかかった。
は目を開ける。

目が暗闇に慣れる前に、ベッドの上では大腿をまさぐった。
そして杖を手に取るも、はベッドの上で微動だにしない。

は神経を張り巡らせる――覚えのある気配が呼び起こされた。

ブラックだ。














30/奇襲














今日、か。
今日じゃなかったら、きっと私はすぐさまブラックを追いに行っただろう。

私は、自分の身の程はわきまえているつもりだ。

それに……セブルスとの約束もある。

でもセブ、向こうからこっちに来られるのなら、こっちも対抗せざるを得ないわ。
保身をしなくてはならない。

はベッドから身を起こして、杖を握り締めた。
やはり身体は未だだるさを覚えていて、頭はまだ熱っぽい。
無茶はしない――無茶は。

ただ、彼をあしらえば良いのだ。

まるでがこういう状態であるのを見計らったような奇襲に、は杖を振る。
伝令の呪文だ。
もしもの場合に備えてだ。

は平衡感覚が回復していない身体で、ベッドの縁に座る。
じっと目を見据え、頭を巡らせる。
そして思考を纏め、は杖を大腿に戻した。

ちらりと扉の向こうへ目線を向ける。
犬が此処にやってくる。


どうしてブラックが、現時点で私に向かってくるのだろうか?
全く意図が掴めない。
アニメーガスであることを口止めしたいのならば、それはあまりにも遅過ぎる。

その答えを出す前に、は一寸先にブラックの気配を感じた。

すぅっと息を吸う――どうか私の身体、いうことを聞いてよ?














鈍い音と共に、うっすらとした光が扉の隙間から扇状に広がる。
それはの所まで届き、の足元が少し明るくなる。

獣の姿が人間の姿に変わっていくのが、逆光の中で黒いシルエットで分かった。

扉は少し開いたままで止まり、お互いの姿が窺い知れるほどの光がある。


「久し振りね、ブラック」


は笑んでいた。
それはブラックには分からないかもしれないけれど。

背の高い男の姿が、の方へ歩み寄ってくる。
猫のような周到な動作だった。

はそれをじっと見ている。


「私、前から貴方と話したかったことがあるの。落ち着いて――私、杖、持ってないでしょ?」


は両手を上に上げて、何も持っていないことをアピールする。
しかしブラックの応答は、ない。


「今貴方に対する攻撃の意思はないわ。お互い、落ち着きましょ。冷静になって話を聞いてもらえないかしら?」


ブラックはへの歩みをやめようとしていないし、その眼光の光は衰えてはいない。
しかしの言葉は、彼女の本心だった。


「私はただ単に、無闇に貴方を捕まえようとしているわけじゃ――」


ブラックの姿から、白く光る細長いものが見えた。
彼の腕が空を切る音と共に、細長くて物騒な光を発しているものが光に照らされて、酷く煌く。

は一度身を逸らしてそれを避ける。

ベッドのスプリングが軋む音がする。
の肩の横で光るナイフ、刃渡りは三十センチくらいだろうか?
何処で手に入れたんだ?


「落ち着いて。お願い」


はブラックの目を捉えようとしたが、ブラックはまたナイフを振り下ろす。
はまたそれを避けて、ベッドから立ち上がった。

瞬間ふらりと身体が揺らぐが、そんなことを言ってられない。
ブラックはまた目を血走らせ、ナイフをに向けてくる。
身を襲うナイフを、はまた避ける。

ブラックはただただ、をナイフで突き刺そうとしていた。
話を聞いてくれそうもない……折角、下手に出てやったのに。

穏便にしていたらこっちがやられる。


「貴方と話をしたいの!
 十二年前、私は貴方の起こしたと言われている事件の現場に行ったわ!
 そして私は、貴方の犯した罪について、ずっと今まで捜査してきた!
 その過程で、私はどうしても不可解で道理に合わないことを多く知ったの。だから、私はそれをどうにか解決させた――」


ブラックは急にナイフを振った。
少しの間動きを緩めていてからの唐突の攻撃で、ナイフはの頬の皮を裂く。
少し血が頬を伝った。

は闇に慣れた目で、ブラックの様子を見る。


「だから? 何だと言いたいんだ?」

「だから……」


鋭い刃先が顔の横の壁に突き刺さった。
は横目でそれを見て、眉を寄せる。

目の前にブラックが、に覆い被さるかのようにしている。


「あんたが来いと言ったんだろう!? そうしないと、俺の正体をばらすと脅して!」

「はあ?」


堪えきれない怒りの感情が浴びせ掛けられて、は拍子抜けする。
何だって?

そのの様子に、またブラックが怒りのボルテージを上げる。
は流石にやばいと思って、ブラックの身体と壁の隙間から抜け出した。

ナイフの柄が握られて、壁からずこりと音を立てて抜ける。
そしてブラックはの方向へ向き直る。
彼の目が、既にの言葉を聞き遂げれるようなものではない。

は次の言葉を告げることが出来ない。
彼の感情を荒げさせたくない……。


「期待通りに来てやったんだ。何が悪い? それもナイフのプレゼント付きだ」


彼は何かの幻覚でも見たのだろうか?
私はこの数日ずっと、医務室や私室で寝ていた。

しかし何らかの起因で彼にこのような感情を抱かせたことを、この状況ではどうしても認めなくてはならない。
では、次にどのような行動を取るのがベストなのだろう?


「結構なプレゼントね」


ブラックが握っているナイフは、の胸に向かっていた。

は腕を差し出し、ナイフを持ったブラックの上腕を押さえ、身軽に身を翻す。
ブラックの隣に立ち位置を変え、片手でナイフを叩き落した。

そのまま押さえていたブラックの腕を掴み、後ろに捻り上げる。
ブラックはそのの動きに驚き、腕を捻り上げられながらも何とかナイフを拾い上げようとするが、ナイフは目前での足で踏まれる。


「でも、貴方の使い方はとても危険だわ」

「……くそっ……」


ブラックは悪態を吐きながら、本来の体格差でを押し返す。
ナイフをまた取り返そうとしているブラックを見て、は杖を持たずに口を開ける。


「Expelliarmus」


ナイフは綺麗に空に弧を描いて飛び、の手の中に収まった。


「危険だ、って言ってるでしょ?」


は右手にナイフを持って、無防備のブラックの前に悠然と立っていた。
しかし、の心の中には焦りが生まれていた。

これ以上ブラックと遊んでいるわけにはいかない。
頭痛が再発してきた。
そして、身体が……熱い。


「いい加減にして。私は戦意はないと言っているのに、貴方はわざわざ――」

「なら、早くナイフを俺に返せ!」


は、目の前の男は、頭に血が完全に上り切っていると判断した。
ブラックは己の身体を武器にするしかなくて、の鳩尾に拳を入れた。

クラリと脳が一瞬麻痺し、喉から妙な音を立てながら空気が出る。
しかし反射的に、は渾身の力でブラックの膝を蹴り上げる。

ブラックは床を擦れて滑った。


は腹を押さえ、肩で息をする。
頭がズキズキと頭痛を訴える……立ってられない。

ブラックはを床に引き倒す。
頭を床に叩きつけられて、一瞬頭が真っ白になった後に、激しい眩暈に襲われた。

ブラックはの喉を両手で締め付ける。


「……ぅっ……」


体重を全てかけられる。
しかしの頭は身体の熱さとは裏腹に、冷静だった。
思い切り右手を振り、ナイフをブラックの腕に刺す。

悲鳴を上げてブラックはの喉から手を外す。
はその隙にブラックの下から逃げようとするが、不意に下腹部に痛みを感じた。
其処にはナイフのきらめきがあった。

刺さされたか。

ブラックはを押さえ、組み敷く。
自分の腕から抜いたナイフを、構える。
は肩の下に痛みが走り、血が吹き出る感覚がした。
そして次は、頬に。

感情のままに切りつけられているようだった。
身体を起こそうにも、力の差でそれは無理だ。


「貴方……女を、押し倒しておいて……失礼だとは思わないのかしら!?」


失血と元々の体調不良から、意識と身体にずれが生じているようだった。
はブラックの股間を蹴り上げる。

呻くブラックを押しのけ、は彼から後ずさった。
もう身体は立たせることは出来ない。
はやっと大腿の杖を取った。


「Stupefy!」


失神光線がブラックに浴びせられる。
しかしそれは、いつもより数段の質が落ちている。


「落ち着いて! 私は、他の魔法省の役人とは違うつもりよ! 貴方から何も聞かずに、貴方をアズカバン送りにはしないわっ!」

「これが……人に「落ち着いて」といえる態度か!?」

「だって貴方が攻撃してくるんだもの!」


ブラックは不意に微笑んだ。
脂肪の落ちた骸骨のような顔は、狂気の色を含んでいた。


「確かに、あんたは他の役人とは違う。しかし、その偽善立ての妙な論理がお前の命取りだ。
 あんたの実力があれば、俺を殺すことも簡単だろうに、呆れた女だ」

「私は貴方を殺さないわ。殺すにはまだ、惜しいもの」

「黙れっ!!」


ドス


「ぐ……あっ……!」


ナイフが右肩を貫通した。

右腕に震えが走り、杖を取り落とそうになるが、何とかぎゅっと拳を握り締める。
握ると同時に、傷口から血が多量に流れ落ちた。

目の前でチカチカと星が瞬いている。
身体中に痺れが走る。
じっとりと、背中に汗が滲んできた。

痛い、というより神経がいかれているような気分だ。
身体が動かせなくて、口を動かすしかなかった。
腕を動かそうとすると、ビクビクと手が痙攣する。


「貴方は……捻くれ者よ……!」

「どうせ罪人だからな」


息を整えることが出来なくて、ゼイゼイと息が詰まる。
頭が痛くて仕方がないのに、目の前の男はにやりと微笑んで見下ろしてくる。

憎らしい。

全身から血を垂れ流し、脱獄犯に追い詰められてもいるのに、は全く恐怖感を感じていなかった。
むしろ心の中は、まるで余裕たっぷりの自分が構えているかのようだった。

目の前にナイフが見えた。
心臓に向かっている。


「殺す気ね」

「ああ」


はしらけた目を見せた。
まあ、貴方にとっては何人殺しても変わらないだろう。
だからって、そんなに素敵な笑みをこっちに見せてくれなくても良い。

は、ブラックが自虐的思考を持っていることが気にかかっていた。
彼はこんな男だっただろうか?


左胸にナイフが繰り出された。

しかし、ブラックはそのナイフが動きを止めたのに驚いた。
勿論、ナイフがの身体に突き刺さる前で、だ。
容易く胸を刺すことが出来ると思っていたのに。

ナイフは闇の中で血によって、黒く染まっていた。
血はゆっくりとナイフの刃を流れ、雫は床へ落ちる。


「ごめんなさい。貴方のご希望には副えないわ」


の声が少し掠れている。

ナイフの刃には、の手の平があった。
ナイフを握り締めることによって、指が裂かれ、血管が破れ、血が流れている。

杖はカラカラと地面を転がっていた。

ナイフを素手で受け止め、微笑む女にブラックは恐怖を覚えた。
の手の平からタラタラと血の筋が流れ、手首を伝って腕を伝って床に落ちて行く……。

はこれ見よがしに眉を寄せた。


「こんな臆病者相手……死喰い人なら、指を切って私の心臓を刺してみなさい。どう? 出来ないの?」


は手の平に力を込める。
血が益々ナイフを伝って流れる。

柄にもそれは流れて行き、ブラックの手に生暖かい血が触れる。

ブラックは内心で軽く怯えていた。
何だ?
この女は?

彼女は血だらけなのに、ナイフの刃を掴み、なお強気な言葉を吐いているのだ。

はふんっと鼻息を吐いて、ナイフをブラックの手から叩き落した。


「貴方なんかに殺されて堪るものですか」


そしてブラックを強く睨む。
ブラックはナイフを床から拾い、手に持って、ゆっくりとから後ずさる。

はぐったりと身を壁に預けてはいたが、目はじっとブラックを見据えていた。

血は、ピチョピチョと指先から爪へ流れ、そして床に落ちる。
爪はマニキュアを塗ったように真っ黒だった。

壁と床は血で染められている。
そしてまた、の右肩にもべったりと鮮血が迸っている。

ブラックはから身を返し、足音を立てて扉から出て行った。
扉の外で、それが犬に変わる気配がした。





は身から力を抜いた。


「あぁー……疲れた……」


身体を動かすのが面倒だ。
このまま意識を失ってしまいそうな状況のまま、息を吐く。

冷や汗が酷い。
まずいな、絶対このまま意識を失ってしまう。

この感じでは恐らく内臓は外れていると思い、は着ていた寝巻きを破って強く肩に縛り付けた。
全身の痛点が悲鳴を上げている。
身体が酷く熱を持っている。


「あの……馬鹿犬め!」


聞き分けが悪いし、刺すだけ刺して帰るなんて!
今度会ったらどうしてくれようか……?










*












「また……貴方はそんな顔をしてるのね……」


目を開けたら、また彼が其処にいる。
彼は安心した顔をしてくれて、は触れられていた左手を少し握り返した。

やはりいつもの医務室だ。
昨日も此処に寝ていた。

が握り返すと、セブルスはまた少しだけ力を入れて、の手を握った。
はそれに軽く微笑む。
しかし、セブルスの瞳に何か違うものが潜んでいるのを感じ取っていた。


「――この……馬鹿女がっ! 無茶をしないと約束していただろう!?」

「……セブ……傷に響く……」


うぅ、とセブルスの声には身を捩った。
声が大きいよ。

そうすると、はやっと自分の包帯だらけの身体に気付いた。
大分大仰な姿を人に見せているのだろう。


「でも、向こうからブラックが勝手に来て、防戦するしかなかったのよ。
 伝令の呪文もちゃんと送ったわ。防戦したけど、身体が本調子じゃなかったからこうなっちゃって……」


セブルスは酷く眉間に皺を寄せる。


「ブラックめ……」


セブルスの怒りの形相に、は目を瞬かせる。
怖いって!

握られている手が、痛い。
強く握り締められているセブルスの手を、はもう片方の手で布団の中から探った。
そしてそれに触れる。


「大丈夫。大丈夫だから」


そして笑みを見せる。
セブルスはその笑みを見て、息を吐いて肩を下ろす。
握られている手が緩くなる。

そしてそっとの髪に漉くように触れた。


「杖はあそこだ」

「ありがとう」


セブルスは顎での杖の在り処を示した。
こんな時も自分の癖を分かってくれているセブルスに、は有難く思った。

は視線をカーテンの外に向けた。


「校長、呼んでくれる?」

「……分かった」


校長がカーテンの外にいるのは分かっていた。
セブルスがカーテンを開くと、ダンブルドアがのベッドの元へ歩いてくる。


「伝令の呪文を受け取っていただけましたか?」

「受け取って君の元へ辿りついた時には、もうブラックは逃げおおせて、君が気を失っておった。
 遅かったようじゃ……申し訳ない」

「いえ、そんな……!」


そう言ってが身を起こそうとするのを、セブルスは止めた。
はセブルスを見上げてから、またベッドに収まる。


「ブラックにむざむざとやられて、今もベッドにいるなんて……! 耐えられません!」

「今君が身を起こすと、マダム・ポンフリーが半狂乱になってそれを止めるじゃろう」

「……校長、昨日のことについてご報告を」


は目を上げる。
ダンブルドアは頷いた。
は目線をセブルスの方にも向けたが、はすぐに視線をダンブルドアへ向けた。

は昨晩のことを洗いざらい話した。
ブラックに対して穏便に話を進めようとしたが、それが適わなかったこと。
そして不可解なブラックの様子。

自分が抱いているブラックの犯したといわれている罪についての不信感は、少しオブラートに包んで、話した。

セブルスは少しそういう表現にも気付いたようだったが、深く考えることはしていないようだった。
校長には隠す必要はないのかもしれないが、体面上、そうせざるを得ない。


「ブラックは? 探索の結果はどうなりました?」

「分かっていることは、君の部屋から続いていた血の落ちる跡が、グリフィンドール寮へと続いていたということだけじゃ」

「ハリーが……!?」

「大丈夫じゃ。怪我人は以外にはおらん。ブラックは、目覚めたロナルド・ウィーズリーが上げた悲鳴で、逃亡したらしい」


は瞳を見据えた。


「ナイフはロン、彼に向けられていたらしい」

「……」


は考え込むような仕草をする。
確かに、暗闇では少年の姿を区別をするのは難しいだろう。
しかしたかが少年一人の悲鳴で、逃げるなんて――いや、あの臆病そうなブラックなら有り得るか。


「詳しいことはまたロンに聞きに行くのが良かろう。結局、ブラックの消息は不明のままじゃ」

「……はい。分かりました。それで校長、もう一つ尋ねさせて下さい」

「何じゃ?」

「私の魔法省への出頭命令はいつですか?」


ダンブルドアは溜息を吐いた。


「明日の朝一番らしい」

「分かりました。有り難う御座います」


ダンブルドアはの姿を目に認める。
どう見ても重傷だ。

マダムがカーテンを開いて中に入ってくる。


「そろそろよろしいですか?」

「ポピー、彼女を診てやってくれ。彼女は明日の朝一番に出かけなければならない」

「……魔法省ですか」


溜息を吐きながらマダムは呟く。
さっきの話は漏れ聞こえていた。
やはり、魔法省というものはろくなことをしない。


「マダム、今日の夜には動けるようにして下さい、お願いします」


マダムは無茶なことを言うに目線を下ろす。


「そうなることが難しいことは、あなたが一番分かっているでしょう?」

「お願いします。身体が一人で十分に動かせるようになれば良いんです」

「……そうだからあなた、身体に傷が残るんですよ……」

「それはご愛嬌ですよ」


マダムは微笑んだから身を翻して、カーテンを出て行く。
彼女がその気ならば、準備する薬品が変わってくる。
強い薬を用意しなくてはならない。


「さて、わしはここでお暇しよう」

「わざわざ来ていただいて、有り難う御座いました」

「それは校長としての当然の責務じゃ」


ダンブルドアはとセブルスを見た。
それは自然な微笑みだったけれど、二人が妙な違和感を覚えるには十分なものだった。


「セブルス、を頼む」


セブルスが何か言葉を返す前に、ダンブルドアは風のように出て行ってしまった。
奇妙な沈黙が残った二人の間に訪れる。


「関係、気付かれてるわよね」

「校長なら大丈夫だろう」

「そうね」


簡単に結論が出た。
すると、はベッドの上で眉を寄せた。


「……頭痛いわ……」

「痛むか? やはり無理をし過ぎだ、お前は……」

「違う違う。精神的なものからの痛みよ」


ふぅ、と嘆息を吐く。


「省に行ったら、絶対ぐだぐだ言われるのは分かってるもの。
 逃がしたとは何事だ、とか、そんなに傷を負ってどうする気だ、とか」

「……堪えろ」


セブルスはの頬に触れた。
はそれをちらりと見たが、それを了承して抵抗はしない。


「そうね、堪えるしかないわ。
 でも確かに、私はブラックを捕まえるために此処にいるのに、その責務を果たせないなんて。
 責められるのに値することだとは、自覚してる」

「随分とネガティブだな」

「まあ、これだけやられてポジティブでいられる方が稀でしょ?」

「確かにそうだ」


頬にキスが降って来る。
は少し驚いて目を開ける。

しかし、すぐにクスクスと笑い出した。


結局、は次の日にはきっちりとマントを着て、魔法省へと向かった。
その前の夜に、あのグリフィンドールの三人組へ詳しい事情を聞きに尋ねた時の、彼らの驚きようは筆舌し難い。



























2008/6/23






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