何気なく厨房に入ると、そこではシリウス・ブラックがグラスを片手にテーブルに突っ伏していた。
彼の顔の横には蓋の空いた瓶が二本ほど置いてあり、中身はほとんど空であった。
彼は最近アルコール中毒になりかけていると、以前にリーマスがぼやいていた。
ヒッポグリフと彼の母親の部屋に閉じこもるのは最近は飽きたらしい。
屋敷の大掃除も粗方済み、彼のやるべきことは「ここに閉じこもる」こと以外もう何もなかった。
下手に今の彼に関わるまいと思い、足音を忍ばせて立ち去ろうと思ったが、その瞬間に彼がこちらに目を向けた。
14/シリウス・ブラックの懇願
以前に交わしたリーマスとの約束は覚えているが、何もこんな状態のシリウスに構う必要はないと思った。
あれ以来シリウスとあまり会うことがなく、約束通り彼と「まとも」に接することはまだなかったが、なにもこんな時にそういうことを試みなくても良いと思う。
しかし、シリウスは酒を大量に呑んでいる割にはしっかりとした目でこちらを見つめており、無視することはできなかった。
「……、お前いたのか?」
「ええ。貴方、一体何を呑んだの?」
シリウスの方へ近寄って瓶を取り上げ、アルコール臭さに眉を顰めながらラベルを確かめる。
見慣れない銘柄の酒であったが、そのアルコール度数は極めて高かった。
嗅ぎ慣れない芳香がする。
「マグルの酒だよ。全部呑んでしまった……おすそ分けできなくてすまないな」
「私、お酒は全く飲めないのよ」
「へえ」
意外そうに椅子に座ったままのシリウスはついとを見上げる。
は、案外普通にまともな会話ができているという事実に、少し胸を撫で下ろした。
「話したいことがあったんだ」
シリウスは、ほら、九月の初め以来こうやってまともに話すのは初めてだろう、と自嘲気味に微笑んだ。
そして、顔を引き締めてじっとの目を見据えた。
開心術などの心配なくこのように真っ直ぐに目を見られることは最近あまりなかったので、は少し胸を打たれた。
「以前、お前の気分を悪くさせてすまなかった。お前がムーディと試した方がましだと叫んだ時の話だ。軽率だった。
それと、キングズ・クロスでの一件でも、お前の忠告を聞かずに勝手な行動を取ってしまってすまなかった」
「……最初の話はもう良いわ。もう大分前の話だもの。
それと、キングズ・クロスでのことは、私に謝ってもらっても仕方がないわ。結局、それで一番困ったことになったのは貴方だもの」
彼がまさかこのタイミングで謝ってくるだなんて思ってもみなくては意表を突かれたが、ふうと息を吐いてからそう述べた。
彼に向けた言葉は嘘はついていない。
シリウスはこちらからまだ目を背けずに、少し顔を曇らせた。
「……そうだな」
「でも、わざわざ謝ってくれてありがとう」
は小さく微笑むと、シリウスは唇を奇妙に引き締めてから、から目を逸らした。
そのままテーブルに沈みかけるシリウスを見て、はこの酔っ払いをベッドまで連れて行かねばならないことを確信した。
精神状態が芳しくない上にこんな状態の彼を、こんなところで寝させるわけにはいかない。
せめて、温かいふかふかのベッドで寝させてあげよう。
「ブラック、ベッドへ行きましょう」
「……は?」
「貴方、ここで寝るつもりじゃないでしょう?」
「まだ寝ないよ。違う酒がまだ残っている。お前も少しくらい付き合ってくれるか?」
このアルコール中毒が!
は無理やり彼の腕を掴み、椅子から立ち上がらせると、驚いた表情をした足元が覚束ないシリウスを背中に担ぎ、厨房から出た。
彼の腕を自分の首へ回し、彼の身体をきちんと腕で固定して階段を上り始める。
のマントが大きく靡いた。
「……お前……」
「何?」
「……いや、なんでもない」
「階段に気を付けて」
泥酔状態のシリウスは大人しくに支えられるままに階段を上り、自らの部屋へ入って行った。
シリウスは力強いの腕と身体を強く感じて、やっぱり彼女は柔い女の身体をしているわけではないのだと思った。
はシリウスをベッドへ座らせると、いつもよりほの赤く見える頬を確認し、平衡感覚の取れない彼の身体を横たわらせようとする。
しかし、シリウスはそれを拒否した。
それを訝しく思いながら再度声をかける。
「お水はいる?」
「……大丈夫だ」
「じゃあ、ちゃんと寝なさいよ」
は任務は終えたとばかりに立ち去ろうとしたが、その腕をシリウスは掴んだ。
少し驚いたような表情では振り返った。
「寝る前に、話を聞かせてくれないか」
は、シリウス・ブラックの表情が先ほどのぼやけたものから獲物を捉えた「男」の顔に変化していることに気づいたが、何も言わなかった。
酒がこのような衝動を引き起こしたのだろうか。
「お前は、俺についてどう思っているんだ? 嘘を吐かなくて良い。率直に話してくれ。
お前がリーマスと、俺が「可哀想」だと話しているのを聞いた。スネイプにやきもちを妬いているってね」
あの時、彼はこの話を聞いていたのか、とは気まずい思いがした。
リーマスですらシリウスのことを「可哀想な人」扱いをしていたのだ。
そして、今現在確実に彼は酔いが回ってきているのだと思った。
いつもは押しとどめていた「知りたい」という欲求を、彼はこの場で晴らそうとしている。
はそれに応じてあげた方が良いと直感的に思ったが、どこまで何を話そうかととても迷った。
言葉を発さないに対し、シリウスは困ったように言葉を放った。
「これだけ話してくれたら大人しく寝るよ」
はゆっくりと言葉を選ぶことにした。
「……そうね。貴方はとても「可哀想な人」だわ。誰だって貴方のことをそう思っているところはあるでしょう。
それに、貴方はセブルスにやきもちを妬いているのは間違いないと――」
「だから、俺の言うことを取り合わないのか?」
いつもより低い声が耳に聞こえ、はっと顔を上げた。
こちらをほとんど睨みつけているシリウスの目が見えた。
彼にこのような目をされるのは、脱獄犯と闇祓いとして対峙した二年前以来だった。
吠えるようにシリウスは言葉を続ける。
「屋敷に閉じ込められた欲求不満の男が女の身体が欲しい、そして、犬猿の仲の人物の恋人を奪いたい、それだけで俺が動いていると思っているのか?」
「……ブラック」
自然とその声は懇願するようなものになったが、シリウスはその言葉にすら嘲笑を見せた。
「その呼び方もそうだ。「ブラック」、「ブラック」……お前は俺を家の名前でしか認知していない。
お前の中では俺はまだアズカバンの囚人なのか? お前が負い目を感じている可哀想な囚人なのか?」
は言葉を継げることができずに黙ってしまった。
彼の言うことそのままだったからだ。
唇を開いても発するべき言葉が見つからない。
シリウスもそのようなの様子を見てそれを察したようで、自嘲の笑いを見せた。
乾いた笑い声が響いた。
「……なるほどね。生憎、俺は女で遊ぶのは学生時代に飽きてしまっているんだ。
スネイプへのあてつけは全くないとは言い切れないが、お前にとっては俺は「獣」のような存在だったわけか。
それに、、俺はお前をちゃんと認知しているのに、お前からのその態度はあまりにも不躾だと思わないか」
少し前に、リーマス相手にトンクスについて同じようなことを言ったのを思い出し、は恥ずかしくなった。
今まで見たことがないものを初めて見るように、はシリウスを見据えた。
シリウスはの視線を捉えた上で、堂々と述べた。
「俺はちゃんと自分に非があると思うことは謝った。お前に相対する権利は持っている」
はぎゅっと眉の間に皺を作った。
どうしても理解できないことがある。
「貴方は――どうして私に固執しているの?」
「お前が俺を自由にしてくれた。アズカバンの囚人だった俺を」
シリウスはあっさりと当然かのようにそう答えた。
むしろ、それを自覚していなかったがおかしいと言いたげだった。
だが、はそれがどうしておかしいのかが分からない。
「私は、貴方がアズカバンに投獄されるのを止められなかったのよ」
「お前は馬鹿か。若い闇祓いがそんなことを止められたわけがなかっただろう。
それに、十二年もの間、忘れずにその時を待っていてくれた。お前のお陰で今の俺がいるんだ」
「でも――!」
シリウスはの反論を耳に止める気は全くないようで、続けて攻撃的に述べた。
「。その上でもう一度訊きたい。俺の何が駄目なんだ? スネイプの何が良いんだ?」
シリウス・ブラック、彼は思っていたより賢いまともな人間だったということにようやく気付いた。
今までの彼の不幸な境遇が彼を変化させてしまって、二年前の凶行や、つい最近の出来事を引き起こしてしまったようだった。
はベッドの傍に立ったまま、ベッドに座っているシリウスを今までとは異なる眼差しで見下ろす。
彼はひたすらにこちらの目を覗いている。
この質問に対する答えは淀みなく明確で、今さら事実を誤魔化そうと思う気は全く湧かなかった。
「セブルスと私は同類なのよ。貴方たちのような真っ当な道を歩んできた人間じゃない。いわば、傷の舐めあいをしているの。
私にとって貴方は眩し過ぎる。貴方は自分の意思を歪めなかったし、どのような状況でも決定的に間違った方向に入らなかった。アズカバンへ投獄された後でもね」
左の拳を握った。
最近、闇の印は常に疼いている状況だった。
セブルスからもらう薬でなんとか凌いでいるが、闇の帝王はあくまで私に嫌がらせをしているようだった。
そして、たまに焼け付き、まるで私を招集しようとしているかのようだと感じていた。
シリウスは不思議そうな顔をしていた。
「……闇祓いが「真っ当」ではないって?」
「人に言えないようなことも沢山してきたわ」
そして、彼は私のことを「全く」知らない。
シリウスは目の前で動く熱を持った肉体の塊を見つめていた。
これが狂おしいほどに欲しい。
今日、最初に会った時からそうだった。
酔った頭はこれ以上我慢できない。
これ以上言葉を発して彼女を誘おうとしても、無理に見えた。
触れたい。
は、シリウスの目が狂気めいた色を一瞬浮かべたのを見た。
「……「真っ当」ではないものは俺も沢山見てきている。お前にも見させてやろうか?」
腕を強く引かれ、力ずくでベッドの上に転がされた。
マントが大きく黒い影を伸ばし、白いシーツの上で形作る。
シリウスはの腕を掴み、その上に乗りかかった。
その動きは緩慢なものだったので、の身体は訓練されたように急所を蹴り上げて拘束を解く動きをしようとするが、シリウスの目を見て、それを止めた。
――彼の目は女を求めるものではなかったし、身体を触る手の動きもそうではなかった。
シリウスの手は胸の膨らみの間の心臓を探り当てた途端、そこの皮膚を強く引っ張った。
皮膚越しに彼の熱い手のひらを感じた。
唇はただこちらの肉体の熱を確認し、奪い取ろうとするだけの動きに留まり、性的快感を求める動きでは決してなかった。
唇が離されると、シリウスの顔がこちらの肩に突っ伏した。
腕はこちらの存在を確かめるかのように身体に回されており、はそれを外そうとは思わなかった。
唇を手で拭いながら、己の肩で彼が泣いているのをちらりと見た。
耳元からは、決して私の名前ではなく、彼の死亡した旧友の名前や言葉にならない悲痛な思いの籠った言葉の切れ端が漏れ聞こえていた。
私も二年前に、これと同じことをした。
全てを抱きとめてくれる腕に身を任せて、まるで子供のように自らの身の上や苦しい思いを垂れ流して、セブルスに縋り付いた。
そして、彼は黙ったまま全てを受け止めてくれた。
――彼は、彼を受け止めてくれる温かい人間の肉体が欲しかったのだと、やっと理解した――。
男女関係なく、彼が片意地を張らずに全てを委ねることができる人間として、数年前に初めて顔を見合わせて彼を解き放った私は適当だったのだろう。
私は彼の過去や学生時代を知らない。
だから、シリウスは現在の己を私に見せるのを躊躇しないのだと、赤子のように嗚咽を上げる彼を見て思った。
肩の辺りが生温い涙で濡れているのが分かった。
彼は吸魂鬼がはこびる冷たい孤独な牢獄で過ごした十数年間の後に、血の巡る温かい生気の満ちた人間の身体を切実に欲していたのだ。
二年前セブルスにしてもらったように、黙ってシリウスの身体に腕を回して、背中を撫でた。
この身体の熱が彼の慰めになるのならば、与えてあげたいと思った。
涙の止まったらしいシリウスが顔を起こしたのは随分と時間が経った後で、シリウスは不思議そうにこちらを見下ろした。
「もう大丈夫?」
彼の目は腫れていた。
シリウスは涙の跡を拭きながら不思議そうな顔をしたまま、答えた。
彼の声は掠れていた。
「……ああ。ありがとう」
「どういたしまして」
は微笑みながら答えたが、彼の目つきが女を求める男のそれに変化していくのがありありと分かった。
この状況では致し方ないと思いつつも、どのように彼を跳ね除けようかと考え始めた。
「……」
「何?」
「駄目なのか?」
肉体関係を懇願している彼は、間違いなく先ほどのような感情だけでこちらを求めているわけではなかった。
その衝動をこちらで受け止めるわけにはいかない。
は大きく息を吐く。
「そんなことをしたら、セブルスに顔を向けられないわ」
「スネイプがいなかったら、良かったのか?」
シリウスはあくまでこちらの目を穴が開くほどに見つめていて、このような状況であるのも加算して、最近のセブルスとは大違いだと思わず思ってしまった。
セブルスに目を見つめられるのは恐怖を伴う。
お互いにそういう意味での不干渉の約束をしていたとしても、闇祓いの本能として仕方がなかった。
セブルスを信頼していないわけでは全くない。
しかし、頭のどこかで、シリウスが学生時代にとてももてたわけはこういうところにあるのだろうな、と思った。
こちらに真っ直ぐに向けられる瞳を悪く思う人間はいまい。
「……難しい問題ね。彼がいなかったら今の私はいないもの」
シリウスは何も言わない。
「――ただ。このような状況になったのは私の一因もあるから、貴方が欲するのならば私の身体で慰めになるのなら、と思う気持ちもあることは事実よ」
ぴくりと彼の眉が動いたのが見えた。
「この欲求を解消しなければどうしても耐えられない、と貴方が言うのならば……」
「抱かせてくれるって? 」
は少し顔を顰めた。
「……簡潔に言うとね」
「俺に負い目があるからか?」
「ええ」
「お前は俺がさっき言っていたことを全く分かっていないようだな」
こちらを見下げる目は冷たく、口調も冷たさと失望を含んでいた。
は思わず口を挟む。
「――はっきり言って。貴方は私を相手に情欲を晴らしたいの?」
「……そういう願望が全くないとは言い切れない。俺だって男だ。しかし――違うんだ、。それだけじゃない。
お前が俺のことを未だ「囚人」扱いをして、負い目があるからと俺に気を遣い、身体まで投げ売ろうとする状況は俺が望んでいるものじゃない」
シリウスはの身体を掴んで起こさせ、ベッドの上で顔を向い合せた。
は不可解そうな表情でシリウスを眺めている。
そういう状況自体が、シリウスにとっては好ましくなかった。
心臓が底から冷えるほどに。
思わずシリウスの言葉は震えた。
「俺は一人の人間なんだ――過去はもう関係ない――今だけを見て欲しい――」
「……でも……」
「お願いだ――!」
シリウスの悲痛な叫びを聞いて、の身体はビクリと驚いたように動いて、目は見開かれた。
そして、ブルブルと傷ついた獣のように震えだしたシリウスを、は思わず抱きしめてゆるゆると撫で始めた。
シリウス自身、が病気に侵された患者を介護するようにこちらを抱きしめていることは分かっていたが、衝動は堪えきれるものではなかった。
情欲を晴らすためだけの女が欲しいわけではなかった。
そんなものは、かつて彼女より美しく若い容姿をした女相手に幾らでも晴らしてきた。
牢獄から出てきて、あの男とがまるでつがいのように仲睦まじくしているのを見て、素直に羨ましいと思った。
己の牢獄の鍵を持っていた彼女は、決して情欲だけに繋がれた関係ではなく、人間としての心で繋がれた関係を持っていた。
アズカバンから出てきて冷え切った身体をしていた己は、肉体の温もりを感じ取れるだろうその関係を切望した。
しかし、彼女は己を「ブラック」というファミリーネームで呼び、彼女の支配下にあった身分のままでしかこちらを認識してくれなかった――。
「シリウス」
彼女の凛とした声が己の名前を呼び、シリウスは待ち焦がれていた瞬間を彼女の腕の中で迎えることとなった。
「私も、貴方と似たようなことをした覚えがあるわ。ある人に縋り付いて泣きじゃくって、今までの自分の苦悩を子供のように泣き叫んだの。
だから、貴方の今の気持ちはよく分かる。でもね、貴方もよく分かっていると思うけれど、私はセブルスを裏切れないわ」
子供に言い聞かせるようにシリウスの背中を撫でながら、は言う。
「その点だけは了承できないけれど、その他は――了承したわ」
シリウスが顔を起こしてをじっと見ると、はその視線を受け止めてニコリと微笑んだ。
今までシリウス相手に見せたことのない笑顔だった。
ようやくシリウスを寝かせつかせ――と言うとまるで子供相手のようだが、実際そうだったので仕方がない――彼の部屋の外に出たのは深夜だった。
彼の苦悩を今まで深くは考えたことはなかった。
気を遣ってあげることが良いことだと信じていたが、彼にあそこまで懇願されてそれを続けることはもうできない。
彼の願望を受け止める努力をしようと心に誓った。
そして、は自分をあそこまでに求める男がもう一人いるという事実を、あまり受け止められずにいた。
人生最大のモテ期というものかしら、と他人事のように思いながらも、やはりシリウスに対して私は大きな役割を持っているからそういうものでもないのだろうと考える。
私は特殊な役回りにいるのだ。
単なる恋情の受け取り手ではない状況である。
大変な状況になってきた、セブルスに知られないようにしないと、と思いつつその場を離れようとした時、一人の人物と目があった。
「……ダング」
深夜にシリウス・ブラックの部屋から出てきた時に出くわす人物としては、最悪だった。
彼がきっと深夜に行っていただろう悪巧みには一切言及せずに、にこりと微笑んだ。
「こんばんは」
「……シリウスの部屋でこんな遅くまで何をしてたんで?」
「彼がお酒で酔っ払っているのを発見して、なんとか寝かしつけていたのよ」
「……へえ」
彼の眼はその説明で納得しているように全く見えなかった。
マンダンガスはいやらしい笑い方をした。
「若い男女がねえ」
「決して違うわ。貴方も、私がシリウスとあんまり親しくないことを知っているでしょう?」
「いーや、こんな時間には何が起こるかわからねえ」
「……否定しても聞く耳を持たないのね。ダング、ホグズミードでは私たち息が合っていたじゃない」
「それとは話が違うね」
にたりと笑ってから、マンダンガスはその場から立ち去って行った。
――まずい。
直感的に、この話がセブルスの耳に入ったらとても恐ろしいことになると思って、冷や汗が背中に流れた。
深夜に特有の空気の香りをようやくの鼻は感じた。
2011/7/10
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