20/監禁
研究室の扉が叩かれ、このような深夜に誰がやって来たのかとうんざりした。
大変迷惑だが、この来訪者がダンブルドアであったら拒否する権利はない。
そして、そうである可能性が全くないわけがないことは身を知って知っていたので、セブルスは大きく息を吐いた。
羽ペンをインク瓶に差し、書きかけの書類をデスクに置いたまま、セブルスは扉へ向かい不機嫌な表情のままに扉を開いた。
そこには、思ってもいなかった人物がまた不機嫌そうな表情で立っていた。
「アルバスからの命令でね。お前と話をしたいことがある」
「これは……マッド=アイ。どうして校長本人が来ないのです?」
「話を聞けば分かる」
ムーディは遠慮なくずかずかと部屋へ入り込み、セブルスは眉を顰めた。
部屋の中ほどまで足を進めると振り返り、セブルスに扉を閉めるよう手を振る。
セブルスは仕方なく扉を閉め、視線をムーディへ向け直した途端にムーディは口を開いた。
「アーサーが神秘部の前で大蛇に攻撃を受けた。聖マンゴに運ばれたが、命は取り留めている」
セブルスは眉をピクリと動かしたが、平素と変わらぬ口調で応えた。
「……なるほど。ただ、あなたがどうして我輩とその話をしたいのか、分かりかねますな」
「アーサーの話によると、が彼を救おうとしたが、・に捕えられたという話だ。現在、と連絡がつかない」
セブルスは固まった。
ムーディがじっとセブルスを観察していると、セブルスは思い出したように硬直を解き、指先を擦り合わせた。
黒く底が見えない探るような瞳がムーディへ向けられた。
低く唸るように、多少の躊躇いを含んだ言葉が発せられた。
「――ダンブルドアも、その話を信用すると?」
「ああ。恐らく、今は彼女は闇の勢力の手に捕えられている。言うまでもなく、彼女が持っている情報が狙いだろう」
面白いほどにセブルスの様相が変わった。
ムーディから視線を逸らし、顔色は一気に蒼褪めて表情は曇りを見せ、指先は彼の動揺を現すかのように細かく動いている。
唇は何かを言おうと度々形を作るが、発する言葉が見つからずに閉じた。
――これが「二重スパイ」とあろう者の姿かと、ムーディは訝しく思った。
しかし、このように動揺しているセブルス・スネイプの姿を見るのは初めてで、それほどに彼はに対して何かしら感情を持っているのだろうか、という考えが頭に浮かんだ。
「だから、わしはお前に話を聞きに来た。この件に関して、何か情報は持っていないか?」
セブルスは顔を上げると、動揺の様相を抑え込もうと唇を引き締めた。
そして、いつもの無表情な黒い瞳で今度は綽綽と答えた。
ただ、それでも隠し切れない焦燥が彼から溢れ出ているのをムーディは見ていた。
「……あなたに対しては……」
「ダンブルドアにしか話せないと?」
セブルスは一旦口を閉じると、言葉を選んだ。
今度はいつものような滑らかな口調だった。
「あなたが欲しいのはに関する情報でしょう? それについて言うのならば、我輩は何も知らない、としか言えません」
「アーサーに関することはわしには言えないということか。……のことについて何も知らない、というのは誓って事実か?」
「彼女に近い人間にこのような情報を渡さなかったのでしょう、彼らは。容易く予想できます。何も知らないことを誓いましょう」
二人の視線が鋭く交差した。
ピリピリとした僅かな沈黙の後、先にセブルスが口を開いた。
「……我輩は、が苦しめられることを望んではいない」
「かつて、彼女に対して攻撃をした死喰い人が言うには、殊勝な言葉ではないか」
ふっと唇に嘲笑するような笑みを浮かべてムーディが述べると、セブルスは不快そうに眉を寄せた。
「昔と今は違う――前にあなたに申し上げたつもりだったのですが――」
「では、もし、今お前がのことに関する情報を知っていたとしたら、お前はお前の立場を無視して彼女を救おうとするか?」
セブルスは口を閉じて、真意を探るようにムーディを半ば睨み付けた。
ムーディはそのような視線を向けられても、壁にもたれて腕を組み、飄々と堂々とした態度を崩さなかった。
「――あなたは、死喰い人に懇意の人物がいたら、闇祓いという立場を無視してその人物を擁護しようとしますか?」
「ありえん」
「そういうことです」
セブルスは挑むようにそう低く述べると、ムーディは眉を上げた。
「ただ、ある程度の範囲で表沙汰にならないように手を回すことはできます」
ムーディは無表情にじっとセブルスを眺めた挙句、組んでいた腕を解いて溜息を吐いた。
苛立ちを現すかのように、杖で床を数回コンコンと叩いた。
「お前は何も情報を持っていないことは、ひとまず信じることにしよう。ただ、お前はこれからどうする? 奴らはお前と彼女を引き合わせると思うか?」
「……恐らく、それはないでしょう」
「何故?」
「拷問に恋人は不必要です。闇の帝王がに関して我輩を呼ぶ必要性が、全く感じられません」
セブルスはきっぱりと言い放った。
このような極めて複雑な関係の二名の扱いはとても難しい。
騎士団の中でも、闇の勢力の中でも、それは変わらないのだろう。
「ただ、できるだけ探ってみるようにします」
「ある程度の範囲で表沙汰にならないように、か」
ムーディが軽蔑するかのように言い捨てると、セブルスの顔が歪んだ。
「……そうせざるをえない状況であることが明らかなのは、あなたもご存じのはず。
あなたは、我輩に「何を投げ打ってもを救ってみせる」と言って欲しいのでしょうか? 愚の骨頂ですな」
セブルスはもう堪えられないとばかりに、授業中のような高圧的な口調ですらすらとのたまった。
セブルスが保っていた堤防が崩れ、ムーディの顔がにやりと笑んだ。
「ようやく小僧が上っ面を投げ打ったな。それで良い。わしはダンブルドアではない」
セブルスは冷たく言葉を放った。
「あなたは何をお望みで?」
「情報だ」
ムーディの言葉も、セブルスと似たり寄ったりの冷たさだった。
二人ともが睨み合うように冷え冷えとした言葉の応酬をしていた。
「では、我輩が何もかもを投げ打って彼女に対する情報を手に入れてくることが、望みということですか?」
「はそのようなことを望んでいない」
「あなたの望みは?」
「を救い出すこと――これは、お前も望んでいることだと推察しているが――」
「当然です」
ムーディは端的に言葉を述べたセブルスをちらりと眺めた。
彼は、死喰い人で騎士団員で閉心術師である。
そして、ダンブルドアとヴォルデモートの犬だった。
「それと、、彼女が望んでいるように事がなされることだ」
あらかじめ準備をしていたかのように、ムーディは言う。
「お前が彼女に相応しい人間だとは思わない。お前は、彼女が望んでいることをなしとげられる自信はあるのか? 彼女を受け止めることができるのか?
そのような複雑な立場にいて、そこから逃れられないことは十分に知っているが、その立場にがんじがらめで現実にを救うことすらできない。
そのことを不甲斐ないとは思わないのか? 答えろ、スネイプ」
眉を寄せ、セブルスは穴が開いたかのようにムーディを見ていた。
そして、徐々に酷く顔を曇らせて、血管が浮き出るほどに拳を強く握った。
「……マッド=アイ、あなたに改めて状況を確認してもらわなくとも、自身の不甲斐なさは我輩が一番よく知っている」
言葉が震えているセブルスを、ムーディはじっくりと眺めた。
「では、これからどうするんだ?」
セブルスはムーディを衝動的にきっと睨み付けた。
「決定的な行動を取ることができないからこの場にいるのです――この場で、あなた相手にこうして言葉を吐くなんていう無益なことをしているのです。
あなたは、我輩がどのような行動を取ることが最適だと思うのですか? 何か案があるのなら是非とも言ってください」
言葉を荒げて激昂しているセブルス・スネイプを初めて見たと、ムーディは感嘆していた。
彼はこちらを激しく睨み付け、いつも血色が悪い顔色が少し赤くなっていた。
感情を抑え込もうとはしているものの、それはまるで成功していないようだった。
先ほどの蒼褪めて動揺した様子にこの激昂の有様を加えて、ムーディは彼に対する一旦の判決を下した。
「――ああ、現在、お前はここでわしに怒鳴り散らしているしかないな。任務に支障をきたさない程度に、情報収集を頼む。
また近い内に顔を合わすことができるように計らおう――なにしろ、わしはお前と違って老いぼれでそれほど義務を抱えてはいない」
「……それは……」
「この件だけは、ダンブルドアに全てを委ねることはできん。お前もそう思わないか?」
まだ血が上って顔色が明るいセブルスは、奇妙なものを見るかのような視線でムーディを眺めた。
「目的が一緒ならば手を組むしかない。単純な理論だ」
「……あなたは……」
「まだ口答えするべきことがあるのか?」
「――いえ、ダンブルドアだけに任せることはできません。了解しました」
その言葉を聞くなりムーディは満足したかのように杖と義足を引きずり、研究室から出て行こうとした。
扉のノブを捻って外に出ようとした瞬間、セブルスは再度声をかけた。
「あなたからに関しての了承をいただけた、と思ってはいけないんでしょうね」
「若造は黙れ」
ムーディは振り返りもせずにそう述べると、大きなバタンという音を立てて扉を閉めて立ち去って行った。
嵐のような人物がいなくなり、セブルスは途端に椅子に崩れ落ちるかのように座り込んだ。
大きく息を吸い、震えるように大きく息を吐き出す。
顔は蒼褪め、セブルスは手で頭を抱えた。
ムーディがいなくなって、予想されている事実がセブルスの回りを取り巻き始めた。
――が闇の勢力に囚われた――闇の帝王による拷問を受けることは間違いない――。
十数年前のことが頭に蘇る。
闇の帝王に彼女だけは救ってもらえるよう懇願した。
だが、結局彼女は殺された。
ダンブルドアさえそれを止めることはできなかった。
そうなったのは元を正すと、己のせいだった。
今回は己のせいとは直結しないものの、大切な人物がまた彼女と同じように闇の帝王の手にかかり、最悪の場合――死――。
セブルスは拳で机を大きく叩いた。
衝撃で、側にあった試験管立てが倒れて試験管が幾つか割れたものの、セブルスの視界にそのようなものは入っていなかった。
ムーディが言うように、ダンブルドアはあてにはならない。
過去がそれを物語っている。
もう二度と、あのようなことを繰り返すものか――。
セブルスは唇を噛み締めた。
セブルスの目の前には、かつての出来事が重く被さっていた。
現実と過去が混ざり合い、それが酷くセブルスを苦しめた。
*
恐らく次に何かをされたら私は死ぬだろう、とは思った。
ベッドだけがある埃っぽい小さな暗い部屋に放り込まれ、はベッドに転がっていた。
そうしている間も肩からの出血はベッドを汚していた。
止まらない出血と開心術、そして度重なる禁呪による拷問――ヴォルデモート自らのそれはの身体を極限まで弱らせた。
真実薬の類はが既に抗体を身に着けていることを知ってか、使われることはなかった。
鉄の臭いが身体から離れず、震え芯から激痛をもよおし神経がいかれた身体は、もう自分のものとは思えなかった。
思うように動くことすらできなかった。
部屋に入れられてから止血はしたものの、既に大量の血液が身体から流れ落ちていて、目が霞んで身体は酷く重い。
は目を閉じた。
殺されるまで口を開かない自信はあるものの、隙を見つけて開心術をされでもしたら、きっとひとたまりもないことが予想できた。
そして――ロングボトム夫妻のように――拷問によって気が狂わないという自信もなかった。
気が狂わない限り、開心術で隙を狙われない限り、口を開かない自信はあるが……その自信は現実的ではないことは本人が一番知っていた。
そうなる前に自決をするのが賢い方法であるということは、既にの頭にあった。
ただ、まだ諦めることはできない。
異変を知った誰かが助けに来てくれるかもしれないし、自分で脱出できる隙が見つけられないとも限らないからだ。
扉の方で物音が立ち、この部屋に誰かが入ってくるのが分かった。
は目を開けて身体を起こした。
「……ルシウス」
は囁いた。
ルシウス本人はの様子を目に入れて、彼らしくない何とも判断の付き難い曖昧な表情をしたと思えば、ベッドに座っているの方に歩み寄ってその隣に座った。
「貴方……」
の声帯は小さな掠れた声しか出すことができなかった。
ルシウスはの側に腰を掛けたものの、彼女を見ずに真っ直ぐ前を見ていた。
そして、の言葉を遮るように口を開いた。
「私が、アーサー・ウィーズリーが蛇に襲われた時に、お前が闇祓い本部で一人でいるのを確かめていた。気づいていたか?」
「……いいえ」
「……」
ルシウスはまたもらしくなく大きく息を吐き、肩を下したと思えば、見たくないものを無理やり見させられるかのような表情でと視線を合わせた。
暫く顔を見合わせた挙句、ルシウスはマントから杖を取り出してそれをへと向けた。
何をされるのだとなんとかは身構えると、その杖先からの身体は徐々に暖まっていった。
彼は恐らくこの身体を癒しているのだと気づくと、は眉を寄せた。
非難するように声を上げた。
「どうして――貴方はこんなことをすべきでは――」
「杖も持たず弱っている身体を携えている時くらい、黙ったらどうだ」
「だって、貴方は――!」
ルシウスはの顎を指でぐいと持ち上げた。
否応なく視線が重なり合った。
冷たい身体にとって、ルシウスの指先の体温ですら温かく感じられた。
ルシウスは真っ白で生気の全くないの顔を間近にした。
「厚情は有り難く受け入れるものだよ、」
「……貴方は何をしにここに来たの?」
ルシウスは黙ると、ある程度の身体を治療できたと判断してから杖を仕舞った。
は以前より生気が漲り軽くなった身体を感じ、ますます違和感を強めた。
彼は私の身体を治療しに来たとでもいうのか?
ルシウスはの顎を持ち上げたまま、その頬を指先でするりと撫でると、の唇の周りを指で撫で始めた。
その手先の動きに、の眉が寄った。
「お前は何をしに来たと思う?」
ルシウスの覚えのある色を帯びた口調と視線から、は察した。
「……私を弄びに来たのかしら」
「八割方正解だ。では、お前はどう動く?」
の目が細くなった。
「唇が欲しいの?」
「……下手に体力を使いたくはないだろう?」
ルシウスは低く唱えた。
下手に体力を使いたくなければ彼が望むように動け、と脅迫されているようなものだった。
半ばこの状況に自棄になっているは大胆にルシウスの顎を捕まえて、まるで恋人相手にするかのように唇を合わせた。
お互いに探り合うように唇を奪い合う。
粘着質な音が部屋を満たした。
揺らぐの身体を支えるように、ルシウスは軽く彼女の腰に手を回した。
その様はまるで恋人同士のようであった。
長い接吻が終わると、は蒼白な顔にまるで娼婦のような笑みを浮かべた。
「貴方はもっと激しいものがご所望だったかしら?」
ルシウスは感嘆した風にそう言うをまじまじと見つめながら、言葉を放った。
「以前はあんなに初心な娘だったのに、随分とセブルスに教え込まれたようだな」
「……ええ」
「面白い。どのようなものか是非とも見せていただきたい」
抵抗する力がないの身体を、ルシウスは組み敷いた。
赤く汚れたシーツにの黒い髪が広がり、ルシウスは僅かに眉を寄せた。
はルシウスのその表情を見つめ、何か釈然としないものが胸に広がった。
彼はまた溜息を吐いていた。
これほど彼の好みそうな状況であるのに、彼は一体どうしたのだろうか。
ルシウスは目の前の身体に食らいつく前に、暫し躊躇いの表情を浮かべて、また言葉を放った。
「……。私が単にお前の身体を弄びに来たと思っているか?」
「それだけだというのは、少し考え辛いと思っているわ」
「ここに催淫剤がある」
ルシウスがマントからその小瓶を取り出すと、はようやく合点がいった。
「貴方はこういうのは嫌いなのね」
ルシウスは心外だと言いたげに、顔を顰めた。
「勿論だ。死にかけている相手に色責めする趣味はない。媚薬を用いるのも好まない」
「でも、貴方はこのような状況は好きでしょう?」
「――闇の帝王から指示されてこのような行為に及ぶのは、屈辱的だ」
は思わず小さく吹き出してしまった。
こちらを組み敷いているルシウスが、まるで拗ねた子供のように言葉を放っているのだ。
当初からの彼の行動にやっと合点がいった。
彼はこのような拷問を好まないし、このようなことをさせられること自体が、とても嫌なのだ。
ルシウスはそのようなを奇妙そうに眺めていた。
「、お前はこのようなものに耐性はあるか?」
「……貴方がどうするかに因るわ」
「肉体的苦痛には随分と耐性があるようだが、本能的な生理的欲求には弱いというのが闇の帝王の意見だ」
このような状況下でこんなにのんびりと言葉を交し合っているということに一抹の面白さを感じつつも、の頭はルシウスの考えを読み解こうと動いていた。
「こんな状況でなんだかんだと言っても、貴方はこれをやらない、という選択肢はないのよね」
「闇の帝王の命令に逆らうほど命知らずではない」
「……そうよね」
ルシウスはやっと心を決めたらしく、動かない、そもそも動けないの身体に手を沿わし始めた。
言い包めて彼にこれを止めさせるなんてことはできないとは、には分かっていた。
彼は死喰い人で、私は騎士団員の闇祓いだった。
確かにこのような耐性は苦痛よりかは身に着けていないものの、なんとかやり過ごすことはできる、とは判断した。
ルシウス相手ならば、ヴォルデモート相手より色々な面で随分と楽であることは間違いのない事実だった。
だから、心を無にして好きにさせておけば良い。
しかし、一つの思いがどうしても胸を過ぎっていた。
「無茶なことだとは分かっているけれど、どうしても私が一方的に貴方に言っておきたいことがあるの。
……貴方のものを私に入れないで欲しいの。セブルスに顔向けができなくなるから」
ルシウスは言葉で返事をする代わりに、首筋をきつく吸った。
ローブを裂き、素肌を外へ晒す。
ギリギリまで催淫剤を用いず、強姦のように女の身体を乱暴に扱わず、まるで恋人かのようにあくまで素肌を嬲り倒すのが彼の趣味なのだと悟った。
右肩の傷には触れずに冷たい体を温めるかのように、ルシウスは動いた。
「……っく……」
の喉が小さく音を立てると、ルシウスは小さく笑みを浮かべて催淫剤の瓶を取った。
「口を開けて」
抵抗をしても無理やりこじ開けられると分かっていたので、は大人しく小さく唇を開いた。
ルシウスは数滴それをの舌へ落とすと、その唇に自らも口付けて舌を合わせた。
の鼻腔に甘ったるい芳香が満ちた。
ルシウスもきっと同じような状況なのだろうか、とは茫洋とした頭で思った。
唇が離れると、ルシウスは囁いた。
「素面ではやっていられない」
はこの催淫剤が、自らが身に着けている抵抗だけでは効果が打ち消されないのを感じた。
熱い感覚が胃から手先へ広がっていった。
2011/10/11
next
top